「あッ……」 胎内を激しく犯していた異物がぬちっという音を立てながら抜けると、緊張した身体が一気に弛緩する。ベッドへ倒れ込んだ瞬間に、サイドテーブルの上に置かれたデジタル時計が黒子の目に入った。終電、とぼんやり思ったところで、「終電」と、頭上から厭に濡れて艶っぽい黄瀬の声が降ってきた。 「このままじゃあ、間に合わないっスね」 言われた黒子は自分たちの現在の有り様を確認する。身体のあちらこちらが汗や唾液や精液で濡れ、その上からそのまま服を着るのははばかられる。せめて濡れタオルでぬぐいたいが、長時間に渡って使われた尻の穴はまだ少しヒリヒリして違和感があるし、何より苦しいくらいの快感から解放されたあとの身体のだるさと浮遊感が黒子をベッドに縛りつけた。いつまでも起きる気配のない黒子を見て、黄瀬はクスクスと笑う。 「帰らなくていいんスか?」 「キミがそうさせたんじゃないですか。一回で終わるって言ったのに」 「うん、ごめんね」 そう謝りながらも黄瀬はあまり悪びれた様子でない。最初から狙っていたのだと分かったところで、黒子は枕に顔を埋めて溜め息を吐いた。 「ねっ、黒子っち」 耳の裏に黄瀬の掠れた声が近くなる。 「明日休みでしょ? 泊まっていきなよ」 ねっとりと絡みつくような、それでいて聞き心地の良い声が差し出す甘い誘惑。狡い男。 「朝まで気持ちいこと、しよ?」 黒子は黄瀬に真っ直ぐな眼差しを向けるだけで、何も言わなかった。それを見た黄瀬は目元を悪戯に笑わせ、再びペニスを黒子の中に埋めていった。 2015.09.24(手に取ったのは甘い果実) |