テキスト | ナノ

 見る者を惑わすような強い照明の下に、オレンジ色のコートが広がる。周りをうめる観客たちのざわめきは、無数の細かい雨となって、コート上のオレたちを襲ってくるかのようだった。
 これからバスケの試合が始まる。オレは今日ねらいにいく自陣のゴールを見据えてひとつ呼吸を置くと、すでに円を描いて集まるチームメイトたちを振り返った。
「今日も余裕でしょー、これ」
「ふんっ。オレは今日も人事を尽くした。だからオレが勝つことは当然なのだよ。しかし慢心するのはよくないぞ、紫原」
「うええー、ミドチン、真面目すぎ〜」
「あははっ、青峰っち何その顔! 緩みきってる! 試合が楽しみでしょーがないのはわかるけど、その顔はないっスわ」
「うっせえ、黄瀬! そう言うお前だって自慢の顔がアホみたいにニヤけてるぜ?」
「アホって何スか、アホって!」
 あいかわらず騒がしい。けれども彼らの顔にはいい緊張感と、何よりも自信が溢れていた。
「赤司くん」
 隣で黒子がオレを呼ぶ。らんらんと輝く黒子の大きな瞳のなかには、希望が映し出される。そうか、お前も、もう試合が待ちきれないんだな。オレはバレないように小さく笑うと、いよいよ円陣を組む。
「今日も勝つぞ、お前たち」
 おおっ!! 闘志のじゅうぶんに乗った熱い声を天井まで轟かせた。オレは、このキセキの世代と幻の六人目のキャプテンでいることを、誇りに思う。


2015.04.17(それは彼らの奇跡だった)