テキスト | ナノ

 三時間目の授業が終了した。教科書の文字を追って板書された文をノートに書き写していくだけという単調な作業を要する日本史の授業は、机上へ崩れ落ちていく者が続出していた。それを目ざとく見つけるたび飛ばされたこのクラスの担任の野太い怒声は他の教室にまでよく響いていたことだろう。
 青峰は休み時間になると、窓際に背中をくっつけながら自席の椅子に体を横向けて座っていた。そのひとつ後ろの火神も、青峰と同じ格好で座る。さらにもうひとつ後ろの黒子は、正面を向いて、そのクラスメートふたりの姿を瞳に映し込んでいた。
 その体勢になりしばらくもしないうちに、火神が「青峰」と口を開いた。
「お前、授業中寝すぎじゃねえ?」
 火神の目つきが悪いのはいまにはじまったことではないけれど、青峰もそれに負けてはいない。
「ああ? 俺に説教するつもりかよ、バカガミが」
「ああんっ!? ンだとアホ峰!」
 いつもどちらかがどちらかに絡んでいくにもかかわらず、口を開けば言い争いが絶えない。その様子はさながらちいさなことでああでもないこうでもないと騒ぐ小学生ようだった。けっして仲が悪いわけではないのに。それをよくよく仲介するのが、黒子の役目だった。
「まあふたりとも、僕に言わせてもらえばどっちもどっちですよ。火神くんだって青峰くんに負けず劣らずよく潰れていますから。おかげで前の大きい壁ふたつなくなって黒板がすごく見やすくなります」
 黒子の、なかなか感情の見えない目にじっと見つめられるとさすがの火神もたじたじになる。しかしなおも彼は会話をつづける。
「そういうお前だってけっこうなもんだろ。さっきの時間、ちらっと振り向いたらシャーペン握ったまま寝てたぞ。それなのにひとりだけ武内から逃れやがって」
 恨み言めいた口調でぶつくさ呟く火神に、黒子からは少し離れた青峰が「まあ、そりゃあテツはな」とどこか納得の様子でそれを引き継ぐ。
「寝てても先公が気づくことねえよな、影薄いし」
「えっへん」
 声のトーンを微妙に変化させて胸を張る黒子に火神がひと言。
「いや、そこ威張るとこじゃねえよ黒子」


2014.07.12(ぼくらの帝光高校!)
過去、このようなオールキャラ学パロをシリーズ化しようとしていました。ちなみに武内先生は青峰と火神と黒子がいるクラスの担任です。