テキスト | ナノ

 毛穴から滝のように汗が流れて不快感を生む。けれど、重なる下半身はたしかに快感を得ていて、奇妙な感覚が襲う。窓も、カーテンも閉め切った真夏日の部屋の中で、紫原と黒子は抱き合っていた。
「くそあっつ。汗、超ジャマなんだけど」
「あっ、も……っ、はやくイッて、い、あっ、イッてくださいむらさきばらくッ……ぅあッ」
 紫原の下で黒子が息も絶え絶えに訴えかける。額から垂れてきた汗が目に染みることと、いま黒子に口答えされたことにいらだった紫原は、黒子の腹の中に押し込めている長大にそそり起つペニスでぐりりっと奥を抉った。「い、あッ!」途端に嬌声を上げた黒子が無意識のうちに穴をきゅっと絞める。思わぬ反撃に、紫原もクッと唇を噛んだ。そうして仰向けになって股を懸命に開く黒子の、いつもより火照った腰を汗でぬるつく手でがっちり掴むと、紫原は腰使いをだんだん荒くしていった。
「あっ、ひぃっ、ああッ、あんっ、あッ」
「あー、もう出そう」
「あッ……!」
「イく、イくっ、出すよ、黒ちん」
 パンッ! とひときわ強く肌を叩く音が鳴ると同時に紫原は黒子の腹の奥に射精した。その衝撃で、黒子のペニスもぴくぴくと痙攣して、遅れて精液をとろとろ吐き出した。すべてを黒子の中に出し終えると、数回、ねっとりとした肉壁にペニスをこすりつけて紫原は一気に腰を引く。ぬぷっと音がした。「はあー、あっつう」黒子に覆いかぶさっていた体をすかさず離して、紫原は全裸のまま仰向けに寝転ぶ。鍛えられた腹筋がせわしなく上下する。
「黒ちん、生きてる?」
「もうッ、ムリです……っ、死に、ました」
 ぜえはあと荒げた息の中で消え入りそうなくらい弱々しい声ではあったけれど返答はあったので、一応生きていることを、紫原は古びた天井の木目を眺めながら確認することができた。
「ははっ、ほんと黒ちんって体力ないね」
「ほうっておいてください。だいたい紫原くんが悪いんじゃないですか」
「はあ? オレぇ?」
 紫原が聞き捨てならないと言いたげに目を眇め、枕に突っ伏す黒子を睨みつける。
「こんな暑い日にエアコンもつけずに始めたのは君の方だったでしょう」
「黒ちんだって途中から気持ちよさそーにめちゃくちゃ啼いてたじゃん」
「それは、君がそうしたんでしょう?」
 枕から埋めていた顔をチラッと覗かせて黒子は悪戯に笑った。尻丸出しで。それまで勢いよく口を開いていた紫原も押し黙る。
「……なんかいまの、超エロいんだけど」
「あっ、今日はもう無理ですからね」
 黒子はむかしからこういうところはちゃっかりしていた。ふたりして黙って寝転んでいれば、先ほどまで聞こえていなかったセミの大合唱がいやでも耳に入る。


2015.02.13(とある真夏のエロ大戦争)