テキスト | ナノ

 部屋にある写真立てはすべて黄瀬くんの趣味でした。中2の全中、高1のボクの誕生日、高2のアメリカと特別試合、一緒に行った旅行先。多くの思い出が溢れるのに、黄瀬くんは淋しさを紛らわすように後ろからボクに抱きついて言います。
「まだ足りないっスよ。オレは中2の前の黒子っちを知らないから悔しい。だから記憶だけで良い、アンタの全部をオレに教えて? これから先の未来もずっとずっとオレに頂戴ね」
 触れる吐息が、熱い。


2017.03.18(古びた写映機を手にして)