テキスト | ナノ

 アレックスが床の上で腹を出して、眠りこけている。火神は盛大に溜息を吐きながら、寝室から引っ張ってきた毛布をきっちり彼女の首までかけてやった。氷室は顔を赤くし、今にも突っ伏してしまいそうな様子でとろんとした目をゆっくり瞬かせて笑った。
「やっぱりタイガは優しいね」
「こんなの優しい内に入んねえって」
 今年、成人式を迎えた氷室の祝いだとか言ってアレックスが大量の酒缶を片手に家へ来たときから、こうなることは火神の目に見えていた。
「タツヤも毛布いるか?」
「いいや、オレはいいよ。それよりタイガ、もう少しだけ付き合ってくれよ」
 そう言い氷室がまだ中身のある缶をちゃぷちゃぷ音立たせ、火神を誘った。火神は、お前もほどほどにしとけ、と軽くクレームを溢しながらも、氷室の正面にすんなり座るのだ。
 テーブルの上には、ダメな大人たちの残骸が所狭しとびっちり並んでいる。それを横へ退かそうと火神が手を伸ばしたら、ちょうど目の前に橙色に着色された缶が差し出された。
「タイガはオレンジジュースな」
 何かよほど嬉しいことでもあったのだろうか。氷室は小さい子どものように笑って、またアルコールを仰いだ。


2016.01.09(子どもみたいな大人たち)