「どうして黄瀬くんは人の名前に『なになにっち』とつけるんですか?」 それは素朴な疑問だった。黒子に、こてんと首をかしげながら上目遣いで聞かれれば、黄瀬はきょとんと目を丸くして、うーんとちいさく唸る。 「オレ、昔からソンケーする人はそうやって呼ぶって決めてるんスよ。それに……」 「それに?」 「そのほうが可愛いじゃないっスか、親しみも湧く気がするし」 「そうでしょうか」 「そうっスよ」 たしかにあの体躯のごつくて強面な青峰もインテリメガネでお堅そうな緑間も、青峰っち、緑間っちと呼んでしまえば、たちまち可愛く親しみの持てる人物には聞こえる。 「まあオレは黒子っちって言うのが一番呼びやすくて好きっスけどね。あっ、もちろん黒子っちの可愛いとことか可愛いとことか可愛いとことかぜんぶ好きっスよ!」 と、ひとり大はしゃぎする黄瀬を軽くスルーし、黒子は「ふむ……」と考えた。 翌朝。 「おはようございます、青峰っち、緑間っち」 いつもの真顔で平然と言ってのけた黒子に、青峰はひいひいと呼吸困難になりながら腹を抱えて大爆笑、緑間はそのままフリーズしてしまった。 自身の検証により名前に『〜っち』とつけてもやはり可愛くないものは可愛くないということを実証した黒子は、あえなくその呼び方をやめた。 2016.08.12(可愛い声で呼んでみせて)古いデータが残っていたのでひとつにまとめる意味で載せました。初ネタ出しは2012年でした。 |