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守っているつもりが縛り付けていたのだと、離れていかれてようやく気付いた。
嘘。本当はずっと前から知っていた。
守ったのは愛されたかったからで、愛してみたかったから。自己満足の献身。結局は全て自分のためだった。


――あの頃の万事屋は俺のための箱庭だった。


愛して愛されて。俺の作った小さな箱庭。
ここにいれば安全だから。ずっと守ってあげるから。お前は何も知らなくていい。ただここにいればいい。外の世界はこわいものがいっぱいあるんだよ。お前はここで笑っていればいいんだよ。
正しい愛し方なんて知らない。だから全てを捧げるよ。俺を愛してくれるお前のために生きさせて。


箱庭の安寧を脅かすものは皆壊した。血にまみれた手じゃ抱きしめられないから、帰る前に必ず洗い流した。怪我を心配するお前に大丈夫だと微笑んだ。涙を浮かべたお前が何を思っているか、考えたことはなかった。お前がいてくれたらそれでよかった。


時は流れる。箱庭の外も中も。平等に。優しく、残酷に。
成長したな。大きくなったな。でも俺にとってお前はまだまだ子供だ。いつまでも子供だ。ここから出ていくのはまだ早い。お前が声高に叫ぶ自由は、そんなに素晴らしいものなのか? お前を幸せにしてくれるのか?
ここにいれば幸せなのに。お前も俺も。ずっと変わらず、幸せなのに。


「さよなら」


突きつけられた別れの言葉を受け入れることはできなかった。これは悪夢だ。
けれど夢は覚めない。空っぽの押し入れを前に膝を折る。お前はもうここにいない。この箱庭も俺も、捨てられた。切り裂かれた心が痛んだ。
もう戻ってこないなら忘れてしまおう。ここには誰もいなかった。独りだった。ならば悲しむ理由はないと安堵した。
箱庭は荒れ果てていく。何故こうなったかは考えない。自分の過ちには目を逸らし続ける。


忘れたい。思う限り叶わぬ願い。忘れられるはずがなかった。あの子は俺の愛そのものだった。
崩れかけた箱庭で暮らす決意をする。あの子の思い出と暮らす。幸せの残骸に縋った。幸いあの子が置いていったものは沢山あった。


瞼を閉じる。あの子は笑っていた。俺も笑っていた。優しい記憶は幸せだ。箱庭は今にも崩れそうで、外からは早く出てこいと呼ぶ声がする。けれど俺は出ていかない。あの子はここでしか生きられない。


その日は一段と外の声が騒がしかった。無遠慮にドアを叩く音。堪えきれずやめろと叫ぼうとした瞬間、ドアが蹴破られた。舞う砂ぼこりの向こうに立っていたのは、あの子によく似た知らない人。まだここにいたのかと笑う。記憶の中のあの子と同じ表情で。


「まだこんなとこにいたアルか? 暗くてじめじめしてキノコでも生えそうアルなここ。あ、もう生えてるかそこに。ちっさいしめじが。ププーッ!」

「……何しに来やがった」

「遊びに来たアル。宇宙をかける美人えいりあんはんたーの神楽様がこーんな冴えないオッサンのところに! 感謝するヨロシ!」

「出てけ。誰も頼んじゃいねーよ」

「フン。うるさいネ。指図なんかされたくないヨ。私はもう立派なオトナなんだから。したいことするし、行きたいとこに行くアル」

「……そうか。なら俺が出ていく」

「え? ま、待ってヨ!」

「お前の顔なんざこれ以上見たくねェ。……不愉快だ」

「銀ちゃん、今の私は嫌い? あの頃の私が好き? 銀ちゃんの思い通りにならない私は、いらないの……?」

「………」

「したいことするし、行きたいとこに行く。私は銀ちゃんに会いたくてここに来た。自分の意思で」

「今さら何言ってやがる。お前の意思でここを捨てたんだろ」

「捨ててなんかないヨ。ここを離れた、けど戻ってきた。その意味を考えてほしい」

「ハッ。んなもん考えたくねーな。……目障りだからとっとと消えろよ」

「……ゃ……いやヨ。だってわたし、私は、」

「…………チッ」

「待って銀ちゃん……っ!」

「銀さん! 神楽ちゃんの話を」

「銀、ちゃん……」

「…………神楽ちゃん」

「し、仕方ないアルなーあのオッサンは! 天パ以上にねじくれまくってるヨ! この数年でさらに酷くなったんじゃないアルか?」

「銀さん、あんな態度とってるけど本当は、」

「分かってるアル。分かってる……。そのつもりだった」

「うん」

「でも。諦めないヨ。絶対に! ……そうじゃないと、何のために傷つけたのかわからない」

「うん……うん。そうだね」

「よーし! そうと決まればまずは腹ごしらえネ! 新八、卵かけご飯ありったけ用意するアル!」

「はいはい。心を込めて炊かせていただきますよ」





fin.






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