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「メローネ」

「?」

「美味しそうな名前」

「!?」

暗殺チーム1の変態、メローネ。
俺は悲しくもこいつと組まされる機会が多かった。
ただ、“暗殺チーム1変態”という称号は、ある人物の参加により揺らぎ始めた。


「名前、俺は食べ物じゃあない…」

「あら、メローネってメロンじゃない。美味しそうよ、名前も、見た目も」

名前
暗殺という業務上怪我が絶えないので、治癒スタンドの持ち主である名前が本部より派遣されてきたのだ。
もともと色々なやつらとかかわり合いがあったようで人当たりもよく、俺もほだされるような形で受け入れてしまった。
このギアッチョがまさかやすやすと新しい“仲間”を受け入れるということにも驚いたが、それ以上に驚いたことがある。

「ねぇ、メローネ、舐めたい。貴方のその白い肌、ダメかしら?」

「いや、その、美味しくないよ名前」

変態の上をいく“変態”
その狂気に満ちた目は何故だかどうしてメローネに向けられていた。

名前が来た時、手放しで喜んだのがあいつだ。
それが間違いだったのかもしれないし、最初から名前の好みだったのかもしれない。
どんなに考えてもわからないことだが、今まで変態No.1だったメローネが彼女に対しては頭が上がらないのも事実だ。


というか、名前の話をしたら氷の俺や、幻のイルーゾォはさておき、プロシュート、リゾット、ホルマジオとか明らかに生ハム、米料理、チーズで美味そうなもん揃いじゃねーか。













「ギアッチョ〜」

「メローネか」

「名前をどうにかしてよぉ」

眉をハの字にして俺の部屋に来たメローネ。
うざくてしかたねぇが追い返した方がもっと面倒なので諦めて一つの椅子に座ることをすすめた。
さらにめんどくせーけどエスプレッソを淹れ、目の前のテーブルに置く。

「グラッツェ」

猫みたいにフーフー冷ましだしたので、俺は手加減しながらそいつのエスプレッソを冷ましてやる。

「で、なんだよ」

「ねぇねぇ、なんで名前は意地悪ばっかりするの?」

「あ?」

「いつもいつも俺のこといじめてくるし…俺、こんなに名前のこと好きなのに」

「は?」

さっきから擬音しか出ねぇ。誰が誰を好きって?

「俺、大好きで、意地悪したいよ、縛って目隠しして猿轡噛ませて道具でさんざん焦らして俺自身をぶち込みたい」

「おめーの性癖は聞きたくなかったわ」

なんだ?こいつは名前が好きで、でも?でもなんだ?

「いつも名前に声かけられて逃げてるじゃねぇか。名前のこと好きなんだろ?」

「そうだよ!ディ・モールト愛してる!でも違うんだ。俺は名前に迫りたいんだ。迫られるんじゃなくて迫りたい。俺じゃなきゃダメなくらいどろどろに愛したい」

所々に性癖を入れこみながら願望を垂れ流す。

「でも名前自身はすごくお前を“好き”じゃねえか」

「違うんだ!そうじゃなくて…」

「は〜…めんどくせぇなぁ。おめーは名前に対して“やりたいこと”が先行しすぎなんだよ。あいつの行為をまず受け入れてから攻めに転じたらいいだろ。所詮男と女なんだから体格的に勝てるだろ」

「!」

「あと、好きなら好きって言えばいいじゃねぇか。お前と一緒で“嫌がるお前”を見るのが好きかもしれねぇし」

「な、なるほど…!グラッツェ!うんうん、やってみる!」

メローネは大急ぎで部屋を飛び出していった。扉くらい閉めろ。









コンコン

今日は来客が多いな。

「ギアッチョ?入っていいかしら?」

「おう」

それはさっきメローネが探しに行ったであろう名前だった。

扉を開けて入ってきたそいつの手にはお盆の上に載せられた二つのケーキとカップ。
ティータイムかよ。


「ペッシくんが買ってきてくれたのよ」

「へえ」

俺は興味が無いふりしてダラダラと漫画を読む。


「さ、わかってるでしょ。上の服脱ぎなさい」

「…」

「右肩、打撲?結構な衝撃よね?さっさと出しなさい」

「…はぁ…」

こいつには怪我をしていてもすぐわかる。
打撲程度なら、と思ってたがバレちまったら仕方ない。
俺は素直に上を脱ぎ、治療を受ける。

ああ、気づかなかったがだいぶ変色してやがる。

「もう…ちょっとヒビ入ってるかも。いい?ちゃんと言いなさい?」

「うるせぇよ」

「素直になりなさい!」

治療前の怪我に拳はいてぇ。すげーいてぇ。
だがこいつは平然な顔をしてあっという間に怪我も痛みも治してしまった。
便利だな。


「さ、お茶にしましょ」

「…」

名前の持ってきたケーキをつつく。

そういえば


「名前はなんでメローネをいじめるんだ?」

「あら、いじめなんて聞こえが悪いわ。極端に構ってる、とでも言って欲しいものね」

「同じだろ。好きなのか?メローネを」

「ええ。好きよ。みんなのことも好きだけど、彼のことは、そうね…“愛してる”わ」

何故もこう平然と言えるのか。

「ならもうちょい絡み方があるだろ。なんつーかよぉ〜…」

なんで俺がこんな仲取り持つようなことしてんだ?

「わかってないわね、メローネはいわば極端なSでありM、言葉にできない変態だし、人に言い寄ることで嫌がられたり、受け入れられたり、自分の行動によって自分を保っているの。そんな彼にいつもの彼を真似て言い寄るのはディ・モールト楽しいわよ?困惑する表情、たまらないわ」

「……似てるな、お前ら」

「ふふ、知ってるわ。とても知ってる。だから私は彼が大好き。…いじめ、というか多少の意地悪はやっぱり愛ゆえかしら」

ふふっ、と笑う。

「じゃあメローネから素直に好きとか言われたらどうすんだ?それかお前の変態行為を受け入れたら?」

「嬉しい限りね、こういう行為で彼を構えなくなるかもしれないけど…それでもいいわ。それは彼が私を受け入れるってことだもの」

「へぇ」

「何か言いたげね」

「さっきのメローネが“名前から逃げる最後のメローネ”だと思うともっと見ておけば良かったなって」

「!」

「んだよ、驚く顔でるじゃねぇか」

「ど、どうしようギアッチョ!そんな、え、心の準備が」

「なんだよいつもの余裕はどこ行った?」

「そんなの別よ!あれはメローネに“される前”に“している”から私が余裕でいれるのよ!」

「はいはい、残念ながらもう遅いみたいだぜ?」

俺が名前の背後に目をやる。
名前もまたその視線の先に何が……いや、誰がいるのかは瞬時に理解したようだった。


「名前」

妙に落ち着き払ったメローネの声に名前はぴくりと肩を震わした。
先程まで饒舌にメローネへの愛を語っていたくせにいざ当人を目の前にするとうまくいかないらしい。
いつもの変態まがいのアタックもメローネに後ろから抱きつかれる形で抑えられていた。


つーか、ここ俺の部屋なんだが?




この後俺の部屋を出て行った二人がどうしたとかは知らないが、翌日のメローネはバカみたいに上機嫌で俺にもキスしてきそうな勢いだったから数発殴っておいた。







好きよ好きよもきのうち



(俺を巻き込むなよバカップル。末永く二人だけでいちゃこいてろボケ。)