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「あー…」

「どーした裕次郎」

「んー…最近名前に会えてない」

「喧嘩でもしたのか?」

「してねーんよぉ…名前、委員会が忙しいらしくてかまってくれねーんさぁ」


平古場は甲斐の落ち込みように友人としてなんとかしてやろうと思うが、理由が理由

忙しい彼女に裕次郎と遊んでやってくれ、なんて頼めるはずも無かった


「でもまぁ、俺がちょっと我慢すればいいだけのことさぁ」


と、いいつつも目線は明後日の方向

名前は美化委員長で、現在学校の改修工事の全面指示を行っている

それほど教師からの信頼も厚い彼女が教師から怒られる回数No1の甲斐と付き合っているのか

これは比嘉中最大の謎ではあるが現に喧嘩という喧嘩もせず仲の良い二人としても知られていた


「あーいーたーいーさー」

「うるせぇ。あ、寛やさ」

「呼んだか?」

「おー「ひろしぃいいいい」


平古場の言葉を遮って入ってきたのは甲斐だった

教室のドアの前で立ち止まっていた知念に甲斐は縮地法で近づく

その出来事に驚きの声が上がるが甲斐はそんなことまったくきにせず知念にすがりつく


「やー美化委員だろぉ!?名前の仕事手伝えよ〜」

「人聞きぬわっさんこと言うな、ちゃんと手伝って「じゃあなんで名前は俺にかまってくれねーんよ!?」


へなへな、と座り込む

そのときだった


「裕くん?」


甲斐の耳に届いたのは待ちに待った人からの声だった


「名前?」

「あ、やっぱり裕くんだ、どうしたの?」


へたり込んだ甲斐に目線を合わせるように名前もしゃがみこむ


「お腹痛いの?大丈夫?」


どこからどうしてお腹が痛いと思ったのかは謎だが、甲斐は目の前の愛しい人に力いっぱい抱きついた


「名前ー!!」

「きゃー!裕くん、ちょ、うぇ、苦し、ちね、知念くん!」


名前は横にいた知念に助けを求め、また教室にいた平古場も甲斐をはがすのに加勢した

甲斐は名残惜しそうに名前の名前を呼び続ける


「名前ー会いたかったさぁ」

「ごめんね、裕くん、お仕事が忙しくて…」

「頑張りすぎなんだよ、名前は」

「でもでも。テニスコート新設してもらえるんだよ!えへへ、頑張っちゃった!」

「え!?」

「そうやさ裕次郎。名前に感謝しろよ」

知念が頷く

平古場も初耳のようできょとん、と話に聞き入っていた


「ほら、コートもみんなが頑張って練習してたからだいぶ汚れちゃったでしょ?慧くんのビックバンとか永四郎くんの前後左右の縮地法とか、それに裕くんのバイキングホーン!皆が頑張った証だけど、やっぱり綺麗なコートのほうが気持ちいいかな?って。近くのテニスクラブに話もつけたし、当分はそっちで練習になっちゃうけどごめんね」

名前は困ったように笑ったが、甲斐は嬉しそうに再び名前に抱きついた


「やっぱ、わんぬ彼女や最高ぐゎーやさ!」


「ゆ、ゆゆ、裕くん!」


名前は甲斐の腕の中であたふたするも犬のようにじゃれてくる彼氏の頭を優しく撫でた


「でも、寂しかった…」

「ごめんね、裕くん。でも今日は一緒に帰れるよ」

「本当!?」

「うん。永四郎くんに感謝しなきゃ」

「永四郎?」

「うん。永四郎くんに」


甲斐はわけがわからないと首を傾げる

平古場も同様に首を傾げるが、知念だけはため息とともに苦笑した


「永四郎は、やーが元気がないことぐらい気づいてたさぁ。むーちーろん、名前に会えねーらんことが原因ってことも。だから生徒会に評定委員として殴りこみをかけて、美化委員の仕事の分担を要求しちゃんんやっさー」


おかげで美化委員としての仕事は極端に減り、自由な時間を手に入れることが出来た

甲斐ははじめて木手に心の底から感謝した


「じゃあ名前と行きたいとこ、いっぱい行けるんだな?」

「そうだね!いっぱいデートできるよ!」

「やったぁ!凛、掃除当番や任せたぜ!」

「ぬーんちそうなるんだよ!?」

しかし平古場も仕方ない、と首を縦に振り掃除当番交代を了承した










帰り道


「めちゃくちゃまーさんカフェ見つけたんだよ!行こうぜ!」

「ホントに?うわぁ、ねぇねぇ、何が美味しいの?」

「んー、むるまーさん!」(全部おいしい!)

「んもう、裕くんったら」

「ほら、名前」


甲斐は手を差し出す


「え?」

「久しぶりに手ぃー繋いでけーろう」

「・・・うん!」


名前は甲斐の手をとり歩き出した

























その背後


「甲斐クン、今日の部活のことすっかり忘れてますね」

「仕方ないさぁ、今日ぐらいは許してやるさぁ、えいしろー」

「・・・ま、苗字サンのお陰でずいぶんと甲斐クンも大人しくなりましたしね。今日くらいはプレゼントとしておきましょうか」

「んじゃ、えーしろ、俺らも練習やす「そうはいきませんよ平古場クン」

「けち!」



仲良く帰る二人の背中を木手、平古場、知念は静かに見守っていた



「そーいやあんねデブはまーた補習やが?」

「社会の補習だそうです」

「はーん」
















「名前」

「なぁに?裕くん」

「かなさんど〜!」(大好きだよ!)

「ちょ、皆聞いてるから恥ずかしいよ!」

「なにがよ?本当のこと言っただけやし」

「もう…」

「名前は?」

「…私もだよ」








だいきをきみに

(そういや、今日部活あったの忘れてたさ)
(ちょ、やーふらーか!?)