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0125//ルーズリーフ


とある文房具屋さん。
今日は家計簿、というか帳簿をつけるためのボールペンがそろそろ寿命を迎えそうなので買いにきたのだ。
以前は手を伸ばせばゴロゴロ出てきたボールペンもなく、0から始める生活ってのは新鮮だなあ。

「お前も買い物か?」

「おお、承太郎じゃん!文房具売り場に来るとか学生らしいことしちゃってー」

「学生だからな」

「そっかそっか」

そうでした。学生でした、彼。

「何買いに来たの?」

「ノートと消しゴム」

「超学生っぽい!」

「学生だ」

くだらないやりとりをしながら売り場に向かう。
あ、このボールペンかわいい。うんうん、書き心地もいいな、これにしよう。

「承太郎決まった?それくらいならおねーさんが買って上げよう!」

「年上ぶるなよ」

「いや、実際年上だからね私」

いかにも無難なノートと消しゴム、そして

「ルーズリーフも買うの?」

「ああ、授業はこれでとって、あとでノートに清書してる」

「まじめかよ」

ひょい、と彼の腕からその3点を奪い、私は足早にレジへ向かった。
後ろで“おい”とか“こら”とか聞こえたけど気にしない。


「はい、どーぞ」

「ったく…いいって言ったってのに」

「まあまあ、…でもルーズリーフとか懐かしいなぁ」

「懐かしい?何がだ?」

「ほら!ルーズリーフに手紙書いて、折り紙みたいに折って渡すやつ!知らない?」

「女子がよくやってるやつか」

実に興味なさげだな!うん!

「友達が彼氏とやり取りとかしててさ、高校時代とかあこがれちゃった」

くだらない話に付き合いながら、結局承太郎は家まで送ってくれた。やさしい。


そして、そんな彼から何気ない日常と、これでいいのか?の一言が書き添えられたルーズリーフの折り紙手紙が届くのはもう少し後のお話。


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