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0110//おせちもいいけど
「ふあー…眠い」
溶けて凍った雪たちに足を取られないように私はスーパーに向かっていた。
ある程度の食事は冷蔵庫に補充されるのだけれど、それが私の食べたいものかはわからない。
なので、時折何かを無性に食べたくなった時はこうやってスーパーに向かう。
本来なら自転車を、とも思うのだけれどこの道で自転車なんか乗ったら転んで病院送りだ。
年の始まりからそんなことはしたくないので、私は“シャリシャリ”と軽い音をさせながら一歩一歩スーパーに向かった。
「おや」
スーパーに行くには此処の横断歩道を渡らなければいけないのだけれど、目の前から歩いてくる人物に思わず歩みを止めてしまった。
「仗助ぇー」
名前を呼びつつヒラヒラと手を振ってやれば、本人は腕がちぎれんばかりに振り返す。おいおい、周りの人が見てるよ恥ずかしいよ。
彼もまた転ばないように足元を見つつ、それでも急いで私の元まで駆け寄ってくれた。
「よぉ名前」
「やっほう仗助。珍しいね、一人?」
いつもそばにいる億泰と康一くんの姿が見えないので聞いてみれば、億泰は刑兆くんと、康一くんは由花子ちゃんと出かけているらしい。
なるほど、寂しい奴め。
「じゃあさ、今からスーパー行こうかと思うんだけど一緒に来てくれる?」
「荷物持ち、スか?」
「御明察」
「ちぇー」
そういいながら仗助は私の横に並ぶ。
悪態をつく癖に、こうやってかまってくれるのは彼の優しさに他ならない。
「そういえば何買うんだよ?」
「ハンバーグの材料。そろそろお正月料理も飽きちゃって」
「あ!俺も!だったらさ、今からハンバーグ、じゃあねぇけどハンバーガーショップ行かね?」
「ハンバーガー?」
「いやあ、俺ん家、すっげぇ量のおせち作ったんだけどさすがに飽きるってーか…」
「仗助らしいね」
“行こう”とスーパーとは別方向、ハンバーガーのお店のほうに彼の手を引けば、少し驚いた顔をしたけれどすぐにはにかんでくれた。
「何バーガーにしよっかなー?」
「俺は肉ダブル!」
「おお食べ盛りの男子高校生らしいね!」
つないだ手は、結局ハンバーガーのお店まで離されることはなかった。