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※関西弁ヒロイン



サボりぐせ

基本テンションの高いうちの学校
そして基本ローテンションのうち
当たり前っちゃ当たり前やけど、合わへん


不登校、まではいかんけど出席日数はよろしくない
今日はたまたま早く目が覚めた

低血圧やし、テンションあがらんし
せやけどまあ、学校行くかな


適当に菓子パン食べて牛乳飲んで、家を出る

小学生が笑いながら横を走っていく



ああ、うちも二年前はランドセル背負ってたんやなぁ


しみじみ思いつつ学校に向かっとるときにあることに気づいた



「今日、一限目英語やん…」


英語が苦手なわけではない
ただ、お笑いに特化しすぎて、アメリカンジョークまみれやねん
ついてけへん、テンションが


「あほらし…帰ろ…」


振り返ると


「ぐぅおふっ」


何か、ようわからんけとぶつかった
うちが何してん
腹に頭突きを食らわせられやなあかんくらい悪いことしたんか?


「あ!すまん!ねーちゃん!平気か!?」

「いたた…あ、うん」


赤い髪の毛、明るい声
ああ、うちと全部が全部正反対やねんな、この子


「その制服、うちの生徒やん!どこ行くん?学校あっちやで?」

「え…ダルいで帰ろ思てん」

「ダルいん!?ほれ!おんぶしたる!」

「え、」

「あ、ちょぉ待ちや!」


鞄から何やら取り出した
それは携帯で、めっちゃ慣れへん動作でいじっとる
大丈夫やろか


「んー…わからへん!」



諦めた



「ほれ、ねーちゃん!おんぶ!」

「え、ええよ、うち重いし、自分潰れんで」

「ワイはそないにヤワちゃうで!ほれ、はよ!!」


赤毛くんはしゃがんでうちが乗るんを待つ
まあ数歩歩いたら倒れるやろ
そしたら軽く礼言うて帰ればええか


「ほな、よろしゅ」

「任しとき!」

そうして、うちは全体重を彼に預けた




























甘かったわ

男子中学生の体力甘ぁ見とったわ

彼はものすごいスピードで走っていた
なんや、うちはいつ電車に乗ったんや
これ、飛び降りたらTVで放送される怪我するわ


『男子中学生の背中より飛び降り、女子中学生重体』


…笑えへん。
とりあえず落とされんようにあらためてしっかり彼に掴まった


「へへっもう少しやでな!」

「あ、ああ」


酔った
もうホンマに気持ち悪かった
せやけど、赤毛くんの声はめっちゃ明るくて、優しくて、心地よかったんも、事実や
































「大丈夫か?保健室までついてくで?」

八割方『無事』に到着
残り二割は『おんぶ酔い』としっかり掴まりすぎたせいで若干腕が痺れとること

赤毛くんは相変わらず心配そうにうちを見とる
めっちゃええ子やん


「平気や。おおきにな、助かったわ」

「そーか?せやったらええんや!ほなまたな!」

「ん。ほなね」


下駄箱で彼と別れ、迷った末に教室に向かった
せっかく来たんやし、保健室はやめとこ



「あ、そういえば」



名前、聞き忘れたわ




































「お、苗字やん。久しぶりー」

「名前ちゃんおはようさん!」

「皆おはようさん。相変わらず美人にイケメンばっかで緊張するわー」

「またそないなこと言うてー」


ほぼ不登校のうちに、皆は優しかった
変わらなあかんのにな、うち

とりあえず皆の挨拶に返事をしつつ、席につく
んで、寝た
なんや朝からどっと疲れたわ



「うわ。珍しいこともあるもんやな」

「んぁ…?あ、財前。おはよーさん」

「おはよ。どないしてん?こないはよ来るなんて」

「朝からえらい目にあってん。男子中学生ってすごいねんなー」

「支離滅裂すぎてわけわからん」

「あー、今日なめんどくて帰ろう思てんけど、なんやどえらい子がおんぶして学校まで運んでくれてん」

「へえ…赤かった?」

「え、なんでわかったん?」

「やっぱりか。それ、金ちゃんや」

「金ちゃん?」

「せや、、部活の後輩」

「部活?財前部活入っとんの?」

「…テニス部やけど…」

「へー!二年間クラス一緒やけどはじめて知ったわ」

「お前には俺の鞄が何に見えとったんや」

「え?なんやえらいデカてへんな形しとる鞄やなーって。…あ、これにラケット入っとるん?」

「正真正銘のアホやな」

「うっさいわ!で、金ちゃんとやらはテニス強いん?」

「ああ、むちゃくちゃな強さや」

「へー!すごいねんなぁ」


財前と他愛ない話をしていると先生がやってきた
出席取って、「おー!苗字久しぶりー!」って挨拶されて

ありがたいわ、ホンマ






HRが終わるとしばらくして英語の先生が来た


「おー!苗字やん!久しぶりやなー、ほな、今日はしっかりした授業せなな」

「おおきに」


うちが、このテンションについていけへんのを知っとって合わせてくれる
あかんなぁ、かわらなあかんのに


続く数学、国語、社会の先生も声をかけてくれた
皆、優しすぎやろ…がんばらな、なぁ…

わかってんねん、『甘え』ってことぐらい























昼休み

「苗字、飯どないするん?」

「購買で買ってくるわ」

「アップルな」

「なんで財前のパシりせなあかんねん。…ったく、待っとれ」


財前とは一年から一緒
テンションってかそういうとこが変に似とる
せやからなんだかんだでよう一緒におる
親友なんて立派なもんちゃうけど一番仲がええ、友達


うちは扉に手をかけ…ようとしたらめっちゃすごい勢いで開いた
いつから自動ドアになってん


「ざいぜーん!聞きたいことあんねんけどー!!っておったぁ!」

「あ、今朝の」


『金ちゃん』やった
うちを見てごっつ驚いとる


「名前ねーちゃんやんな!?」

「あ、うん。そやけど」

「ワイ、遠山金太郎言いますねん、よろしゅう!」

「よ、よろしゅう…」


圧倒される



「あんな、ワイの胸ポケットにねーちゃんの生徒手帳入っててん。たぶん朝、ねーちゃん背負ったときに入ったんやと思うんやけど…2年って書いてあったで財前に聞こうか思たけどおんなじクラスやってんなー」


ニカッと笑う遠山くん
めっちゃええ笑顔やな


「ほい!んで、もう体平気か?」

「あ、うん。平気やで、おおきに」


今朝の言い訳、若干忘れとったわ


遠山くんから生徒手帳を受けとる


「あんなー、ホンマやったら朝…「金ちゃーん」


声がしたほうを見ると


「うわ…」


思わず声が漏れたわ
なんやあのイケメン二人組


「白石と謙也や!どないしたーん?」

「金ちゃんがえらい勢いで走ってったで追いかけてきたんや」

「あかんでー、金ちゃん、皆に迷惑かけたら。すまんな、苗字さん」





「なんでうちの名前…」

「俺、保健委員やねん」

「ああ…なるほど」


たしかに保健室利用率No.1やでな、うち
知っとっても不思議ちゃうわ


「せや、白石ー」

「どないしたん、金ちゃん」

「朝なー白石に電話しよ思たけどようわからんかったー」

「金ちゃんの携帯、お子様用の携帯やろ!?」

「うるさいわ謙也のアホー」

「はいはい、喧嘩はよそでやり。で、なんか俺に用事やったん?」


そういえば朝、携帯いじっとったな


「名前ねーちゃんがダルい言うてたでベッドの用意してもらお思てん」


よう気ぃつくなぁ…
せやけど連絡ついたらついたで大事なってたわ


「ほー、えらいなぁ金ちゃん。せやけどもう名前ちゃんは元気みたいやで?な?」


白石さんはうちをみて軽く笑う
うちもそれをみてぎこちなく頷く


「せや、自己紹介がまだやったな。俺は白石蔵ノ介」

「俺は忍足謙也や!浪速のスピードスターっちゅーのは俺のことや!」

「そないなこと言うてもこいつにはわかりませんよ」

「あ、財前」


たまりかねたように財前が出てきた


「財前知り合いなん?」

「白石さんは部長や。それに謙也さんもアホやけど先輩や」

「誰がアホやねん!」

「先輩以外に誰がおります?」

「なんやてぇ!?」

「ええかげんにし。せっかくやで皆でごはんたべよか。名前ちゃんも。屋上行こに」


白石さんが提案する


「ワイ、購買いってからいくわー」

「あ、うちも購買いかなご飯ないんですわ。遠山くん、一緒にいこか」

「おう!」

「なんやお誘いいただいておおきに。遠山くんとあとから行きますんで」

私は軽く頭をさげて遠山くんと購買に向かった



















「んとなー、あれとこれと、それと…これもやろー…んで…」

「よぉ食べるなぁ」

「腹へったんやもん!って、あかん、お金たらん…、どれ諦めよ…」

「ええよ、遠山くん、今朝のお礼に足らんぶんは出したるよ」

「ええんか!?」

「うん」

「おおきに!!」


うおおお
まぶしい笑顔やなぁ





























「名前ねーちゃん」

「ん?」

「ワイのこと、金ちゃんでええで!」

「金ちゃん?」

「せや。皆金ちゃんって呼ぶでな」

「そうなん?せやったら金ちゃんって呼ばせてもらうわ」

購買でほしいもん買って二人で屋上に向かう
てか金ちゃん買いすぎやろ
男子中学生の食欲ってすごいな、底無しか
もはや前見えてへんくらい買っとる金ちゃんを心配しながら階段を上り、屋上につく



そこには『テニス部』の仲間であろう人らがおった


「あらーん、いらっしゃーい」

「金ちゃんの遅かったやん」


オカマさんとバンダナさん


「金太郎はんの食欲は相変わらずやなぁ」


坊主みたいな人


「お、その人は誰ね?」


でかい人


「苗字名前いいます、財前と同じクラスのもんで成り行きでご一緒させてもらいます、よろしゅう」

「よろしゅうね〜、ほら、一緒に食べましょっ」


















結論


騒がしかったけど楽しかった



皆ほんまにええ人らやし、それに…


「名前ねーちゃん!明日、一緒に学校いかへん?」

「う、うん」


金ちゃんとおると、なんやほっこりできた
勢いで登校の約束をしてしもたけど、なんやろ


はよ明日ならんかなぁ














その日から毎日金ちゃんと学校に行った
昼休みはテニス部にマジってご飯食べて、気がついたらテニス部の手伝いまでしとった
臨時マネージャーっちゅーやつや

毎日授業も出とるおかげで成績もぐんぐん伸びたし、何より皆のテンションにもついていけるようになった
楽しすぎるわ、毎日


せやけど、一番楽しいんは…


「名前ー」

「おー、どないしてん金ちゃん」


金ちゃんに会えること
好き、なんやと思う


「ちょっと聞きたいねんけどなー」

「うんー」

「ワイな、名前と一緒におるとめっちゃ楽しいねん。せやけど、どきどきしてしもて…ワイ、病気なんやろか?」


財前と白石部長が吹き出した
そらそうやわ



部室で告白されてしもた













「なー名前ー」

「せやったら、うちも病気や」

「名前も?」

「うん」

「どないしたら治るん?ワイ死ぬん?」

「治す方法あるでぇ、金ちゃん」


白石部長が笑う
あ、この笑顔はあれやな、余計なこと言うな
無駄嫌いやねんやろ、無駄なこと言うなや


「名前と付き合ったらええねん」

「付き合う?買い物か?」


あかーん!金ちゃん正真正銘のアホやったー!
純真無垢のワンパクボーイやったー!

白石部長も肩落としとるし、財前なんか固まっとる
いたたまれへん
なんやこの空気



「ええですよ、ぶちょー、ここはうちから言わせてもらいます」


嘘、告白はしてもらいたいやん?


「なぁ、金ちゃん」

「ん?なんや?」






「うちな、金ちゃんとおったらめっちゃドキドキすんねんけどな、それ、めっちゃ幸せやねん」

「幸せ?病気が幸せなんか?」

「幸せな病気もあんねんで」

「へぇ、ほなワイも幸せか?」

「せやなぁ、そうやって思ってくれたら幸せやなぁ」

「?何言うとるかよぉわからへん…」

「なぁ、金ちゃん、その病気の名前な、自分でわからなあかんねん。せやから約束して?」






病気の名前、わかったら教えてな











病の前は
(部活でイチャイチャされるとやりにくいなー。なー、財前。って何ヘコんどるんや)
(ちょっと失恋中なんで話しかけんといてくれます?)