「‥〜♪〜♪♪〜」 静かな部屋に流れていたのは1人と1匹の寝息と、微かな歌声だった。 夢路を辿っている新八と定春の横に転がっていた神楽が、小さくあくびをした。 同じく横になって愛読書であるジャンプをパラリと捲りながら、銀時の耳が歌声を辿る。 言葉はよく聞き取れないが大して長い歌ではないのだろう、綺麗だが少しだけ切なくなるようなメロディが、ゆっくりと繰り返されていた。 何度か歌声を辿るうちに、メロディの流れが何となく見えてくる。 仰向けになってジャンプを顔に伏せながら、銀時は目を閉じた。 ―――次はこうだったよな‥ 「‥♪〜♪♪〜」 無意識にハミングしていたのだろう、妙がクスリと笑う声が聞こえて銀時は目を開けた。 ジャンプをどけて妙を見ると、神楽の髪を撫でながら妙が微笑む。 「‥あら、止めちゃうんですか?」 小さな声で囁くと、妙は再び神楽に目を落としながら歌い出す。 それには答えずに、銀時はあくびをしながら妙の膝に頭を乗せた。 一瞬固まった間の後、ギリギリと銀時の顔面が締め上げられる。 「銀さん?何やってるんですかコルァ」 「いやその、眠くなっちゃって」 渾身の力で妙の手を引き剥がすと、そのまま自分の目を覆うように妙の掌を引いて、銀時はあくび混じりに呟く。 「‥さっきの、続けてくれない?」 こうだったっけ、と小さくハミングする声に小さな歌声が優しく重なる。 細い指が髪を優しく梳くのを感じながら、銀時はゆっくりと眠りに落ちていった。 (081119) |