測量係の嗜み




「…ここにいたか。ようやく見つけたでござる」

「晋助先輩!明日の放課後、音楽室押さえといたッス!」

「あァ、そろそろ音合わせしとかねェとなァ」

「そうでごさるよ。晋助にもいい加減、戻ってもらわねば」

「わかってらァ。今日から顔出す‥」

「晋助?」

「先輩?左目がなんか‥アレ?」

「‥後から行くからよォ、お前ら先行っとけ」

「「あ、眼帯が」」

「よォ、志村姉」

「あら高杉くん、今日は眼帯してないのね」

「いや、さっき紐が切れちまってよォ」

「簡単でいいなら、結んであげましょうか?」

「頼む」

「別にこのくらい‥はい、どうぞ」

「悪ィ、助かったぜェ‥あ」

「どうしたの?」

「お前よォ、ちょっとデカくなったかァ?」

「え?身長のこと?言われるほど伸びてな‥」

「違ェよ、こっちだ」

「‥っ、え」

「デカくなったっつーか、張ってんのかねェ?でもまァ確かに、頑張ればBクラスに行けそウグハァッ!」

「フフフフ…やだ、高杉くんたら。誰から聞いたの?ソレ」

「…ックク、あんなに大きな声で力説してたら、イヤでも耳に入ってくるってモンだぜェ?」

「そっ、そう…不覚だったわ…!他に誰か聞いてたりしたのかしら」

「あー、銀時と沖田がいたなァ」

「情報提供ありがとう、高杉くん(にっこり)
…それじゃ心置きなく逝けゴルァァァァ!!」

「グフッ!」


測量係、完全に沈黙。
地に沈んだ高杉を見て、思わぬ事態にフリーズしていたまた子と万斉が駆け寄った。


「…魂のリズムが、レクイエム調に変わっているでござる」

「晋助先輩ィィィ!やいお前ェ!晋助先輩に何するんスかァ!!」

「いきなり胸触った当然の報いだろーがァ!!てめェも潰されてーのか、あァ!?」

「ス、スミマセンでしたァァァ!」

「お友達なら、しっかり言い聞かせておいてくださいね?次は殺るって」

「了解したでござる」


後は坂田くんと沖田くんね、と瞳孔全開で笑みを浮かべた妙が踵を返すと同時に、また子と万斉はため息をついた。


「あれが噂の志村妙か」

「晋助先輩がここまでのされるなんて…!何者ッスかあの女!只者じゃないッスよ、あの気迫」

「犬猿の仲の男たちが揃いも揃って夢中になってる少女のようだ。造作も気質もさることながら、その成長過程に男のロマンが揺すぶられるとか」

「……なんかよくわかんないッスけど、あの女も大変そうなのはわかったッス。とりあえず河上、アンタキモい」

「心外な。拙者は事実を述べただけなのに」

「ニヤけた顔が何言ってんスか。それより、晋助先輩がまだ復活しないんスけど…!病院連れてった方が、」

「心配ござらん。これは満ち足りている顔でござる」

「そーそー。左目があるくせに、触りすぎなんだよコイツはよォ」

「仕方あるまい。昔から素直じゃないというか、捻くれているからな。この程度なら、エリザベスも不要だ」

「懲りない男じゃの〜でも触れるのはうらやましいぜよアッハッハッハ」

「まァたお前らッスか!晋助先輩を妙な活動に巻き込むんじゃないよ!」

「別に巻き込んでねーよ!つーか妙な活動って、俺ら何もしてないよ?なァ?」

「おぅ。たまたま帰る時間が重なったりするだけじゃけー」

「ウソつけェ!お前らが放課後、コソコソ集まってるのは知ってるんスよ!」

「それは違うぞ。江戸の平和と進化論に対する己の見解を熱くぶつけ合い、互いに切磋琢磨しているのだ」

「はいキモい。つーか長くてウザいッス。とりあえずアンタ、髪切ったらどーッスか」

「ヅラァ、だからいつもヅラ取れっつってるだろ」

「ヅラじゃない桂だ」

「‥前日比、0.8%微増」

「「「あ、復活した」」」

「晋助先輩、大丈夫ッスか!?」

「何の前日比でござる?(何となく察しは付くでござるが)」

「へェ‥いやホント、健気だわ。応援したくなるねマジで」

「やめておけ、それ以上エリザベスを増やしてどうする」

「この前のプレゼントは、まぁまぁ効果があったってことかのぅ」

「まァ、このくらいの変化はコンディションに左右されるがなァ」

「なるほど、だから左目でござるか」

「‥晋助先輩?」

「あァ、心配すんな来島。これは個人的な嗜みってヤツだ。問題ねェ」

「高杉‥貴様のは嗜みではなく、セクハラと言うんだ」

「良かったッス‥!晋助先輩が楽しければ、それでいいッス!!」

「えっ、いいの!?お前ちょっと甘やかしすぎじゃね?」

「晋助も変わったでござる」

「確かに昔はそんな左目はなかったのぅ、アッハッハッハ!」

「能ある鷹は爪を隠すもんだぜェ。じゃ、行くかァ」


妙の鉄拳を食らった測量係は、また子と万斉を連れて悠然と歩き出す。
その後ろ姿を見送りながら、3人は異口同音に呟いた。


「「「‥鬼●郎、侮りがたし」」」

(あの鉄拳を受けて、復活があんなに早いとは)
(一番打たれ強くしぶといのは、ヤツかのぅ)
(あ、よろめいた。やっぱ効いてんだ鉄拳制裁)



(080503)



TMM目次





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -