会長の変化球




「‥何してんの?」

「っ!‥あぁ、坂田くん」

「どしたの?神楽たちがさっき探してたぜ」

「その‥ちょっと、先生に呼ばれてて」

「ふーん」

「‥な、何よ」

「いや、まるで隠れるみたいにしてたからさァ」

「そんなこと、するわけないじゃない」

「じゃあ、何でずっと小声なんだよ?」

「か、風邪気味なのよっ!」

「へえ‥俺はてっきり買い物に連れてかれるのがイヤなのかと」

「違うわ、イヤじゃなくて恥ずか‥ちょっと、何で坂田くんが知ってるの?」

「更衣室の会話、男子の方まで筒抜けだったけど」

「えぇっ!?」

「あ、そんなに人いなかったから気にすんな。
まぁ、気持ちはわかるよ俺も。ピンポイントで成長が停滞すりゃ、そりゃー不安にもなるって。
でも心配すんな。そいつは病気なんかじゃないぜ」

「そ、そうなの?」

「たりめーだろ。いいか、人間が成長するには十分な栄養や睡眠・ジャンプの他に、もうひとつ重要な要素がある」

「ジャンプは別に必要ないと思うけど」

「少年には必須アイテムなんだよ。もうひとつの要素‥それは」

「それは?」

「それは、刺激だ」

「‥‥」

「前から気になっちゃいたんだが、やっぱりお前も気に病んでたんだなァ。相談してくれりゃ、俺はいつでも力を貸したのに」

「何いいこと言ってるみたいなツラしてんだ、あァ!?」

「うお、待てって!いいの?そんな事しちゃって!そのまな板が進化する絶好のチャンスだよ!」

「まっ、まな板!?」

「男のロマンの象徴が泣いてるかもしれないよ?私はまだまだ頑張れるハズなのに、ってな。
お前のロマンが開花するには、ちょっとしたキッカケが必要なんだよ。
だから任せとけって、俺のゴールドハンドはいい仕事す‥」

「‥‥‥っ、」

「アレ?おい、志‥!
(やべェ、涙目になっちゃってるよ!やりすぎたか!?ちくしょう、半ベソものっそいかわいいんだけど!いや、泣かすつもりはなかったんだよォォォ!どうしよう俺!えーとえーと)」

「‥そんなに、小さいってダメなことなの?」

「いや!そんなことないよ!?あ、よく考えてみたら、でかけりゃいいってもんでもなかったわ」

「ついさっきまで、熱弁してたじゃない」

「あれはその、アレだよアレ!トリビアっつーの?進化論的な。昨日テレビでやってたんだよ」

「‥‥」

「そっそれに俺としては、胸よりも顔っつーか、サラッサラヘアー重視っつーか、剛腕重視っつーか」

「よくわかったわ。坂田くんは外見にしか興味がない、底の浅い男なのね」

「それは大きな誤解だよお前。俺は違いのわかる男だよ。それに健気にがんばってる小さいヤツを応援したくなる、心の優しい男だ」

「結局まな板に話が戻ってるじゃねーかこの天パァァァ!!」

「グホォッ!!」


会長、撃沈。
妙が振り返りもせずにその場を後にすると、それまで様子を見ていた高杉と沖田がやってきた。


「ざまァねーなァ、銀時」

「うるせーよ鬼●郎」

「会長〜いくら愛情表現が小学生レベルだからって、今のはちっとやりすぎですぜ」

「あー‥、って小学生レベルって何だオイ」

「だってなァ、お前もそう思うだろ?志村弟」

「ちょ、待って!ウソ、待って!誤解だよ新八くん!!その、つい遊び心がやんちゃしちゃってね!」

「なーんて、冗談でさァ」

「‥‥(コイツら、いつか絶対ぶっ飛ばす)」



(080419)



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