譲れないこだわり




1階にある、とある教室の窓際で、犬猿の仲で有名な男たちが雁首揃えて校庭を眺めていた。

校庭では、女子が二手に分かれてソフトボールをしている。
今は体育の授業中だったが、男子担当の体育教師が病欠のため自習になったことを良いことに、教室を抜け出した男たちは示し合わせたように空き教室へと向かう。
その教室はあるテーマのために頻繁に使用され、男たちは日頃のわだかまりを捨て、熱く議論を交わしていたのであった。

ソフトボールに興じる女子と、その中で髪を高く結い、スラリとした体にジャージと短パンを身につけた少女を見比べている男たち。
その様はむさ苦しく且つ異様だったが、その目はひどく真剣である。

そんな中、最初に口を開いたのは銀時だった。

「‥やっぱりさァ、標準に比べて発展途上にあるのは否めなくね?それに見ろよ、ジャージ着てるってことは本人も気に病んでんじゃねーか?俺が思うに、刺激を加えりゃいいと思うんだよね。今度俺加えてみようかな」

その言葉に、眼光鋭く校庭を凝視していた土方が即座に反論する。

「止めろ。つーか実行したら殺す。それにわかってねェな、大切なのは大きさよりも形だろ。手のひらに収まるくらいがいいんじゃねーか」

その言葉に、高杉は鼻で笑って言い放った。

「ハッ、何言ってやがる。大きさも形も問題じゃねェ。重要なのは感度だ」

その言葉に、沖田もしたり顔で頷く。

「同感だぜィ。しかもちっさい方が感度もいいし、育て甲斐があるって話ですぜ」

そうかのう、と頬杖をついて校庭を眺めていた坂本が笑顔で異議を唱えた。

「わしは、やわらかくて綺麗な肌だったらええがのう。触感がえーのが一番じゃ」

その横で、桂が生真面目そうに頷いた。

「それも一理あるな。ただ、志村さんの素晴らしさはスタイルのバランスの良さだ。それを考えると、あのくらい控えめな大きさの方が理に適っていると言えるんじゃないか」

それまで男たちの会話を聞いていた全蔵が、腕を組んで校庭から目を離さないまま口を開く。

「お前らの言うこともわかるが、リアクションが一番大切じゃねーか?恥じらう仕草とかさァ、普段あれだけ強気なのが泣きそうになっちゃったりするとか」

それを聞いた山崎も頷いて同意する。

「あ、ちょっとそれわかるかも‥っていうか、こっそり小さいのを気にしてたりするとかわいいよね」

近藤が、ガバッと立ち上がって全員に向かって声を張り上げた。

「みんな、志村さんに失礼じゃないか!!俺は貧乳ごと志村さんをあい‥」

全部言い終わらないうちに、近藤は頭に豪速球を受けて沈黙した。
漂う氷のような殺気に、その場にいた全員が息を飲む。
教室に入ってきたテーマの対象となっていた少女は、ぐるりと全員を見回してにっこりと微笑んだ。

「ボールを拾いに来てみれば‥みんな揃って、何の話をしてるのかしら?‥‥お前ら全員、胎児から人生やり直して来いやァァァァァ!!」

男たちの退路を塞ぐように、2人の少女が立ちはだかる。

「姐御のおっぱいは、お前らなんかに渡さないネ!」
「妙ちゃんの胸は、僕が守る!」

男たちの悲鳴が廊下に響き渡る。
かぶき町高校は、今日も平和であった。



(080306)



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