クリスマスシーズンは、すまいるでも大事な稼ぎ時である。 万全の態勢で臨んだ、クリスマスの陣とも言うべきお水の戦いをどうにか終えて、妙はやれやれと息を吐く。 どうにか目標を上回る成果を出せたので、疲れてはいたが、心地よい充実感が酒の酔いと共に身体に漂うのを、妙は感じていた。 片付けを終えて外に出る頃には日付もとっくに変わっていて、冷たい風が妙の頬を撫でる。 アルコールと疲れにぼんやりとした頭で、昨日のことを思い浮かべた妙にふわりと笑みが浮かぶ。 寝静まった街に、妙の足音が小さく響いた。 クリスマスイブも当日も仕事だと事前に知っていたのだろう弟は、妙にプレゼントを用意してくれていた。 イブの夜の仕事を終えて明け方に帰宅して、温かいお風呂に入り、潜り込んだ布団の枕元に置かれていたのは、かわいらしいクリスマスカードと小さな箱だった。 クリスマスカードにはサンタクロースらしき人物が元気いっぱいに描かれていて、小さな箱にはきらりと光るキーホルダーが入っていた。 幸せな気持ちのままいつの間にか寝入っていた妙が目を覚ますと、すでに陽は高く上っている。 慌てて居間へと降りていくと、新八と神楽と銀時がメリークリスマス!とクラッカーを鳴らして、笑顔で妙を迎えた。 テーブルの上にはケーキと共においしそうな料理が並べられていて、4人と1匹で騒がしくも楽しい食事を堪能した。 楽しい時間はあっという間に過ぎて、妙は後ろ髪を引かれる思いを戒めつつ、背筋を伸ばしてクリスマスの陣へと赴いたのだった。 「後でみんなにお礼をしなきゃ」 くすくす笑いながら妙が呟くと、横の路地から煙草の煙と共に隊服を着込んだ男がゆっくりと現われた。 「随分ご機嫌じゃねェか」 「あら、土方さん。こんな時間に市中見回りですか?」 「まァそんなとこだ」 目を細めながら煙を吐き出している土方に、妙は大変ですねと微笑む。 「すまいるは大盛況だったらしいな」 「えぇ、お陰さまで。そちらの局長さんにも随分協力していただきましたよ」 「‥‥あァ、そうだろうな」 コロコロ笑う妙の言葉に、昨日回収に向かわせた山崎の疲れ切った顔を思い出し、土方は深いため息を吐いた。 「しかも今年はね、新ちゃんと神楽ちゃんがクリスマスプレゼントをくれたんです」 「へェ、あのガキ共もなかなか粋なことをするんだな」 土方の言葉に、妙はそうなんです!と満面の笑みを浮かべる。 「起きたらご飯もケーキも用意してくれててね、みんなでクラッカー鳴らしてくれたのよ。銀さんまで」 「‥‥」 土方の眉がピクリと動いた。 「クリスマスは仕事一色だと思っていたから、うれしくて。後でみんなにお礼しなきゃって」 上機嫌に話す妙に答えず、土方は妙の手を掴んだ。 「‥土方さん?」 不思議そうに首を傾げて見上げる妙に、土方はらしくない自分に心の中で舌打ちしつつ、妙の手を握りしめて歩き出した。 「‥クリスマスのアフターっつーことにしといてくれよ」 ボソリと呟いた土方に、妙の目がいたずらっぽく輝いた。 「じゃあ、今度は土方さんも飲みに来てくださいね」 ‥考えておく、とそっけなく返事を返す土方の耳が赤くなっているのを見て、急に自分の顔が熱くなるのを感じた妙は、うろたえたように俯いた。 (081226) |