(榊様から頂きました素敵文です。夢変換機能がございますので、先にこちらで設定をなさってください)



『日常に華が咲く』


厨房に向かいコツコツと足音が近付いて来る。
その足音を聞きながら先程焼き上がったばかりの菓子をオーブンから出した。こちらに向かう足音にはいつの間にか鼻歌が混じっている。
そろそろかと,扉に目を向ければ上機嫌な銀髪が見えた。

「今日は随分とご機嫌なんですね。」

問えば何が楽しいのかブレイクはケラケラ笑いながら答える。

「ギルバート君ですョ〜。」

その一言にまたからかって遊んだのだと言うことは直ぐに察しが着いた。
溜め息混じりに続きを促すと,ブレイクはやはりケラケラと笑って話を続けた。

「また禁煙しようとして失敗したんですヨ。」

誰が原因だ,と思いながらブレイクの目の前に紅茶と焼き上がったばかりのクッキーを出す。
ブレイクは待ってましたと言わんばかりにクッキーを凄い勢いで食べ始めた。
勿論,紅茶は砂糖の入れすぎでじゃりじゃりと音を発てている。

「貴方の飴やお菓子も大差ないような気がしますけど…。」
「適度に糖分は摂取しないといけないんですよ?」
「どの辺が適度なんだか…。」

私にとっては適度です,と言いながら最後の一枚を口に入れ完食。口直しと言わんばかりに飴まで舐めはじめ,見ているこちらまで口の中が甘く感じられた。

「ところで…名前。」
「何ですか?」
「明日,貴女休みですよネ。」

何故か断定口調で言われ,そんな話を聞いた覚えはないと,首傾げる。

「確か違うと思います…。」
「休みですヨ。」

ブレイクは言い切ると懐から紙切れを出して見せた。
どうやら芝居小屋のチケットらしい。それもかなり有名な一座のものだ。

「これは?」
「チケットですネ。」
「そうじゃなくて…。」
「明日の朝,迎えに行きマス。」

それだけ言うとブレイクはチケットを渡し,その場を後にしようとした。
どういう意味だと名前を呼べば,振り返ったのは肩に乗ったエミリー。カタカタと動きながら鈍い女だなんて生意気にも言ってきた。

「悪かったわね…鈍くて…。」

そう呟けば,ブレイクが小さく溜め息をつき足を止めた。やはりこちらを向く気配は無い。
またカタカタとエミリーが動く。

『デートの誘いに決まってんだろ!』

そう言ったエミリーを余所に,ブレイクが振り返ることはなかった。



明日,待ってます



翌日,約束通りブレイクが迎えに来た。
何故か顔が紅い気がしたけれど私は黙って彼の手を握りました。
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