■奥村誕のお祝いコメント!
二人とも誕生日おめでとう!そして生まれてきてくれたことに大感謝…!!
これからも末永くお幸せに^^


※「優しい世界で会いましょう」と設定が同じです。



雪男は街中で冬の寒さに一人身を震わせた。
今は十二月なので季節は冬であり、いくら温暖化の影響で温かくなっていると言われても寒いものは寒い。それになにより雪男は冬が苦手だった。
暑いのは我慢できるが寒さはどうにも苦手なのだ。冬生まれだし、名前にも雪が付いてるのになぁと色々考えてみるが、きっと寒いと感じるのは冬だけのせいではないのだろう。

世間ではクリスマスが終わり、もう年越しの準備で忙しい。
だが雪男は年越しの前に自分の誕生日があった。
自分が生まれた誕生日を今年は一人で祝わないといけないのだ。勿論友人たちは雪男を祝ってくれるし、パーティーまで開くとまで言ってくれている。だがそれでも雪男の中にはポッカリと穴が開いたような寂しさがあるのだ。

燐がいない。
無事魔神を倒した後、世界の均衡が崩れ、新たな魔神が必要となったのだ。そして雪男と小さな約束を交え、彼は魔神になるべく自らこの世界を去って行った。

その事を寂しくないと言ったら嘘になる。だがそれでも彼が決めたことなのだから、雪男には何も口出すことは出来ない。

雪男は寒い空気にあてられ、心の中で疼くものがより一層酷くなった。
風が吹く度に雪男とすれ違う人は同じように身体を震わせている。その中で家族連れの人とすれ違い、雪男は自然とその家族へと視線を向ける。

買い物帰りだろう、夫婦の間に小さな子供を挟んで手を繋いでいる。父と母、両方の手を握る子供の顔は幸せそうに笑っていた。
その光景に心が温かくなると同時に酷く虚しくなった。どこにでもありそうな、温かい家庭。
今だけは酷く目の毒だ。

唯一、血の繋がりがある家族は別の世界に行ってしまったのだから。
雪男は寒くなって、かじかんだ両手を自分の息で温めた。前までなら、こんなとき彼がいたのだ。

いつも雪男の傍にいた彼はいつも温かかった。真冬だというのにその手に触れれば氷のように冷たかった筈の手が一気に解かされていくほど。
まるで彼の人柄そのままを映したかのような体温が雪男は好きだった。彼に引っ付いて湯たんぽみたいだと言うと怒られたりもしたが、彼も雪男と引っ付けるという行為自体は満更でもなかったように思える。

どうりでこんなにも寒い筈だと、寒がる原因に思い当る節がありすぎて雪男は苦笑いを浮かべるしかなかった。
すれ違った家族はもう遠くまで行っている。

父と敬愛した獅郎はもう死んだ。
兄として、恋人として愛した燐は別の世界に行ってしまった。

本当に世界で一人きりみたいだと空しくなると、せめてもう一人悪魔でも人間でもいいから家族がいたらよかったなぁ、とさらに虚しくなることを考えてしまう。

雪男はそんな無駄な考えを捨てようと頭を振ると、誰もいない扉に鍵を差し込んだ。
先程任務を終えたばかりで、その報告書を今からメフィストに持って行く所だ。
今日の仕事はこれで終わりだから早く報告書を渡してさっさと家に帰ろうと自然と早足になる。
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