■奥村誕のお祝いコメント!
雪男と燐、お誕生日おめでとう!!これまでもこれからもともに生きる二人が、ずっと幸せであり続けますよう


生まれてきてくれてありがとう


***

二人にとってこのかけがえのない日に。

***

「―どうしたの兄さん?疲れた?」

ベッドに突っ伏したきり、微動だにしない燐に向かって雪男がそっと呼び掛ける。それに対し燐は、ん…とけだるげな声を小さく漏らした。
二人きりの寮。
二人きりの部屋。
そして―今日は12月26日。
雪男と燐にとって、一年で一番の記念日である、誕生日を翌日に控えた、記念日前夜ともいうべき今日のこの日。
お馴染み祓魔塾メンバー達による『せっかくだからクリスマスと奥村兄弟の誕生日一緒に祝っちまおうぜ真ん中パーティー!!』と題した集まりが盛大に開かれたのだった。
生まれて初めてクリスマスケーキと誕生日ケーキを別々に用意してもらい(とはいえ作ったのはどちらも主賓であるはずの燐だったが)ハッピーバースデーの歌で皆からお祝いをされ、雪男と燐の二人が顔を見合わせてくすぐったそうに笑みを交わし合ったのは、ほんの二時間ほど前のこと。
祓魔塾の教室を使っての会だったので、明日の授業に差し支えのないよう片付けまできちんとし終え、解散した時には時刻はすでに夜の9時になっていた。
時間が時間だけに、女子チームはシュラと京都組が分担し送って行くこととなり、雪男と燐はクロと一緒にそのまま鍵を使って寮へと帰ってきたのだが、燐は帰るや否や、ベッドに倒れ込んだままで。

「兄さん、寝るなら着替えてからの方が―」
「なぁ、ゆきおー」

再び掛けた雪男の言葉は、燐の声にさえぎられた。

「なに?兄さん」
「今日さぁ…すっげー楽しかったよなぁ…」

枕に顔を埋めている燐の表情が一体どんなものなのかは雪男には解らない。けれどその声がどこか寂しげに聴こえるのは、決して気のせいではないはずだ。
雪男は燐をじっと見つめ、慎重に言葉を重ねた。

「…そうだね。楽しかったね」
「内容はまぁ、カラオケとか手品とか一体どこの忘年会だよって感じだったけどな…」

クスクスと笑い声を立て、ようやく燐が顔を上げる。
満面の笑みを浮かべている燐を目にして、雪男はようやく肩の力を抜いた。

「確かにね」
「しかも出雲と勝呂としえみがトリオコントするとかありえねーだろ?さすがにあれにはびっくりしたぜ!」
「どうもくじ引きで決まったらしいよ。最初は神木さんと勝呂君の二人がかなりごねてたって話だけど、朴さんが仕切って二人に一からお笑いの基本を叩き込んだんだって」
「…え?朴が?」
「うん。ああ見えて朴さんかなりのお笑い好きなんだって」
「へぇ…人は見掛けによらねぇもんだな…志摩がすんげー音痴だったのにも笑っちまったけどさ。しかもアノ下手さで自分は歌が上手いって思ってんだから、ある意味すげーよ」
「そうなの?」
「あぁ、子猫丸が言ってた。志摩は自分の音痴に気付いてねーから、周りの連中も気ィ使って知らん顔してやってるんだってさ」
「それは…大変だね」

しみじみと雪男が呟く。

「だよなー!あらかじめ子猫丸からその話聴いてなきゃ、俺あやうく志摩に“さっきの歌は20点だったぜ!!”って言ってたかもしんねー」

マジやばかった、と悪戯っぽく燐が笑う。
そしてそっと瞼を閉じると、

「…本当…楽しかったよなぁ…」

泣き出す前の子供の表情で、燐は小さく独りごちた。
その瞬間、ふいに雪男は言い知れぬ感情を覚え、足早に燐のベッドへ近づくと、

「―兄さん」

その場にゆっくりとひざまずいた。
おもむろに手を伸ばし、燐の頬へと触れる。

「ゆきお…?」
「―まだ終わってないんだけど?」
「―え?」
「僕達の誕生日は明日だよね?なのにどうして楽しかったって過去形なの?」

雪男はじっと、どこか責めるような眼差しで燐を見遣る。
燐は一瞬目を見開くと、ばつが悪そうにわずかに顔を伏せた。

「…あ…そっか…そういやそうだよな…」

言葉を濁す燐に、雪男は畳み掛けるように続ける。

「皆とのパーティーは終わったけど、僕達にはこれからが本番なんだよ。それにまだ兄さんは僕からのプレゼントを受け取っていないだろ?」
「プレゼントって…?」

おっかなびっくり訊ねる燐に向かって、雪男は花が綻ぶような笑みを浮かべる。そして、

「―もちろん、僕自身だよ」

決まってるだろ―そう優しく告げた後、燐の身体の上にゆっくりと覆いかぶさっていったのだった。


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