■奥村誕のお祝いコメント!
奥村兄弟が生まれて来てくれたこと感謝します*


好きな子ほどいじめたい


外を見ると、まだクリスマス気分なのか、幸せそうなカップルが歩いていた。
燐にも、彼女とああやって一緒に歩きたいと思う時期はあったけれど、今はもう何とも思わない。
何故かというと、自分には勿体無いほどの恋人がいるからだ。

今燐がいる旧男子寮には、なんと部屋を暖める機械というものが何一つなかった。
ヒーターだとか、ストーブだとか、エアコンだとか、そういった物。
勝呂たちのいる男子寮は、床暖房らしい。
もちろん空調をいじるものは全て完備。
本来、ここは取り壊される予定だったし仕方ないとはまあ思う。
羨ましいなあとも思う。
でも、外の寒さなんて関係ないぐらい今はうきうきしていた。
今日は12月27日。
燐と雪男の誕生日なのだ。
年に一度の特別な日。
これと言って何かをするわけでもないけれど、二人きりで静かに過ごせる素敵な時間だ。
正十字学園に入学して少し経った頃、雪男に想いを告げられた。
自分が悪魔だということ知り、雪男の将来のためにも黙っていようと思っていたのだけれど、あまりに突然なことで、何も考えず自分も、秘めていたものを打ち明けてしまった。
嬉しかったのだ。
好きな人と想いが一致しているということが。
どうしようもなく嬉しくて、打ち明けた後はぼろぼろと涙を溢して泣いた。
あれから何ヶ月も経ったし、毎日一緒にいるけれど、想いは変わらない。むしろ大きくなっていく。
雪男もそうだといいなと思うと、自然と頬が緩んだ。

電子音で目が覚めた。
いつの間にか眠っていたらしい。
重い瞼を擦りながら電子音の主を探した。
「あった」
電子音の主はベッドの上にいた。
手に取り、確認する。
画面には、「雪男」の文字。
ぱちりと目が開く。
こういう時、好きな人の存在っていうのはものすごく大きいと感じる。
すぐに通話ボタンを押して、耳を当てる。
「雪男!どした?」
声が高くなる。雪男の笑う声が聞こえた。
『ごめんね、こんな時間に』
「全然平気!怪我とかしてないか?腹減ってねえ?」
『大丈夫だよ、ありがとう』
電話越しから聞こえる声がすごく綺麗に聞こえる。
ああ、やっぱり好きだ。
「で、どうしたんだよ?任務中にお前が電話って珍しいな?」
雪男は任務に行っていた。
メフィストからの電話に、どうしようと相談されたが雪男なら絶対大丈夫、約束も守ると思って言って来いと見送ったのだ。
その約束というのが、手を繋いで一緒に寝ようというもの。
言葉に出来ないことを記念日にやってみようということで決定したのだ。
あまりこったものは考えられなかったけど、忘れっぽい兄さんでもこれぐらいなら平気でしょと言われた。
お前との約束なんだから絶対に忘れないとも言った。
それが丁度先週のことで、指切りもした。
『うん・・・』
雪男の返事が、何故か妙に暗かった。
それに、返事になっていない。
やはりどこか怪我したのだろうか。
「だ、だいじょぶか?迎えに行こうか?」
『ああ、大丈夫。・・・あのね、兄さんに謝らなくちゃいけないことがあって』
「謝らなくちゃいけないこと?」
「うん・・・。すごく、言いにくいんだけど。今日、帰れなくなっちゃった」
その言葉を聞いた時、俺は一瞬何を言われたのか分からなかった。
脳が固まったみたい。全く動いてくれない。
少しずつ、ゆっくりと脳が動いて、その言葉を理解しようとする。
「・・・・帰れ、ない?」
確かに、祓魔師である雪男は忙しい。
強いし、頼りになるし、手当ては速いししうまい。
使える人材ってわけだ。仕方のないことだと言えば仕方のないこと。


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