■奥村誕のお祝いコメント!
兄さん、雪ちゃん。お誕生日おめでとうございます。いつまでもお幸せに。


In vino veritas.
(ワインの中に真実あり)

燐手製の料理と雪男の用意したワインに舌鼓を打つ。
忙しい任務の中でようやっと訪れた二人きりの時間。
それを満喫する。
やがて食事を終えた二人は、残ったワインのグラスを手に語り合う。

「あれから五年が経つんだね」

ふいに雪男がこぼせば、燐も相槌を打った。
 
「あぁ、色んなことがあったな」

二人が今いる場所も、あの古びた正十字学園男子寮ではなく。
その身の上も、あの頃とはまるで違うものに変わっていた。
いまや二人は悪魔と悪魔堕ち、聖騎士とその遣い魔だ。

「兄さん、気付いてた?」
「あっ、何に?」

問いを重ねた燐に、雪男はワインの瓶に貼られたラベルの数字を示す。
製造年を示すそれは、ちょうど20年前の数字だ。

「これ、もしかして……」

燐の言葉尻を拾って、雪男が代わりに答える。

「これ、僕らが生まれた年のワインなんだ」

雪男の意図を量りかねた燐は、黙り込んだ。
雪男はそんな兄に、切り出した。
胸の内に今まで秘めてきた気持ちを。

「ずっと伝えたかったことがあるんだ」と。
「二十年前の今日、僕らはこの世に生を受けた」

燐の肩が、ぴくりと顕著な反応を示す。
痛ましい思いでそれを見つめながら。

「知っているよ。兄さんが、今も後ろめたく感じていること」
「雪男……」

視線をさ迷わせ、迷子の表情を浮かべる様は常の彼ではなく。
そうさせることを、雪男はすまなく思った。

「だけど、違う。二人で生まれてきたことが幸せなんだ。僕はそう思っている」
「俺も思ってる。だけど……」

燐が言いよどむ。
雪男と視線を合わせられないでいる。

「僕にとっては聖痕だ。贈り物だったよ」

兄から与えられた魔障を、なかったことにしたいと思ったことは一度だってなかった。

「兄さんは僕を巻き込んだと思っているかもしれないけど、それは違う」
「だけど、お前は悪魔になっちまった」

それを自分のせいだと思っていることは、雪男も知っていた。
知っていながら、否定したことは一度もない。

「それが僕の望みだった。一緒にいたい。一人にしたくない。僕のエゴだよ」

悪魔と人間では、遠くない先に別れがある。
それを認められず、雪男は堕ちた。
いや、それも違う。
兄と共に永く生きる未来を選んだだけだ。

「……お前、何も言わないから」

呆然と燐は雪男を見つめ、そうとだけ返した。


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