■奥村誕のお祝いコメント
奥村燐様並び奥村雪男様。お誕生日おめでとうございます!来年も、いや末永く爆発していてくださいませ!


「誕生日おめでとう。小さな愛し君」

ぴり、と痛みが走り始めたのはいつの事だったろうか。
冬の、決まった時期だけに。


胸元に、ちくりと。


久々の休日。
残念ながら、休みを取れたのは俺だけだ。もっとも、雪男は午前のみの仕事だって言っていたし、明日は一日オフだと言う。

疲れていると言う雪男の為に出来る事は数少ない。家事は俺がしてやれる少ない事の一つだった。
掃除をして、洗濯をして。
まるで主婦のようだとつい笑っていると、じん、とした痛みが走った。
シャツの胸元を強くにぎりしめる。
眩む程の痛みではない。じんわりと響くような痛みだ。
ふとカレンダーを見れば、ああ、もうそんな時期かと一人納得する。

今日は、12月26日。

だから、雪男は無理にでも午後から明日いっぱいを休みにしたのだろう。
明日は、俺と雪男の誕生日だから。



「もう22かー・・・早いもんだな・・・」

弟の高校進学も間近だったあの頃。俺は悪魔としての覚醒をした。
最愛の父を失い、唯一の肉親に死ねとさえ言われた。
それなのに、だ。
俺は、実の弟を愛している。
そして、弟もまた、俺を愛している。

人と悪魔の交わりは、あろうことか近親相姦という禁忌。しかも二卵性とは言えど、双子という間柄で。
それでも、愛してしまっただけだ。
俺は雪男を愛してる。それに変わりは無い。
勿論肉体関係も持った。そんな関係が、もう何年も続いている。
今、雪男は国立大の学生をしつつ、祓魔師として仕事をしている。
医師になると言う夢が、もう少しで、叶う。

それに対して、俺は聖十字学園の学生のうちに祓魔師として、騎士の称号を取得。今は上一級祓魔師だ。

雪男が医師になれば、正式に祓魔師を辞めさせたい。密な野望だ。


「・・・っし、おーわーりー・・・あ、あった」


洗濯物を干していると、最後に残ったのは雪男のワイシャツ。
自分の体にあてると、もはや子供が大人の服で遊んでいるような見た目だ。

悪魔として覚醒した俺の体は、成長を止めてしまった。
どんなに鍛えても筋肉さえ付かず、15歳のままだった。
変わった所と言えば、力を封じる為にあるピアスと、普段束ねている肩位まで伸びた髪だけ。
雪男は、何時までも幼くて可愛いとか、そそるとか言っていた気がする。
急にいらっとして、手荒く、それでもピンッと張らせてシャツをハンガーにかけた。

シーツに布団まで干して、そろそろ昼になると気付く。


「雪男、昼飯どーすんかな・・・」

午前で終わりだからと弁当を断られていた分、普通なら帰ってくる。
でも、あいつには大学に友達がいる。時たま飯に誘われる位には仲のいい友達が。
もしかしたら、昼飯どうだと誘われるかもしれない。
一回、連絡を。
そう思ってふと左手を見れば、シンプルなリング。
プラチナ製のそれは、内側にサファイアが埋め込まれた結婚指輪だ。
20歳の誕生日の日、雪男に捧げられた証。


「―――っとりあえず、連絡だ、連絡!」


俺は真っ赤になった顔を叱咤しつつ、慌てて携帯を探った。


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