短編 | ナノ


▼ 嘘つきの受難

「キミに好きな人がいるなら諦めるから、そうじゃないなら付き合って欲しい」

なんてまったく知らない男子に言われて、私は恋人なんて今は作りたくなかったし、でも好きな人なんていないからどうしようかってちょっと考えた。
嘘も方便って言うし仕方が無いよねって呈で私は嘘をつくことにした。

細く息を吐いてグッと止める。
顔が赤くなってくるのを感じてから私は嘘をついたの

「私、好きな人いるから…」

「誰?」

面倒臭いな、そう思いながら無難な所を答える。

「氷室くん」

氷室くんはこの学校屈指のイケメンくんだ。
氷室くんが好きって言う女の子はいっぱいいる。
だから私もこっそりと氷室くんに好意を寄せる女の子の群れに紛れ込ませてもらうことにした。

「氷室、と…か、見込み無いだろ?…俺にしとけよ」

彼は少し怯みながらもそう言った。
しつこいなぁ

「見込み無くても私は氷室くんが好きなの」

「何で?顔がいいから?」

「顔もいいけど、氷室くんバスケ部の練習遅くまで残って頑張ってるし」

友人A情報である。

「熱心に上を目指せる人って素敵よね」

友人Bの言葉である。

「それに、頑張ってる男の人って支えてあげたくなっちゃう」

友人Cの名言である。

「時々浮かべる物憂げな表情ってキュンとしちゃう」

友人Dの持論である。

「見込み無いのは承知の上だけどね、私は氷室くんが好きなの
彼が頑張ってる姿を見ていたいの、応援したいの
自分の感情を押し殺して氷室くん以外と付き合うなんてできないわ」

友人Eの格言である。

これだけ言えば諦めてくれるかなって、彼を見たら彼は涙目になってた。
よっしゃ

「そんなに氷室のこと好きなんだな、俺…余計に好きになっちまったけどこれ以上は付き合ってなんて言わねぇよ
振り向かせてみせるから!!」

そう言って走り去って行く彼の背中に頑張れーと小声で声をかけて、さて私も教室に帰ろうと踵を帰した所で物影からガタンという音がして「あっ!」という声がした。
体制を崩して物影から出てきたのは

氷室くんでした。

真っ赤な顔をした氷室くんは困ったように、諦めたように手を差し延べてきて

「俺と付き合ってください」



さて、どうした物か

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