短編 | ナノ


▼ それでもまだ掠りもしない

「新羅、首より上があるって理由でふったんだって?」

「あぁ、その話しか」

数少ない(自分で言うのも微妙な気分だ)友人の、それも女子である和泉が単なる気まぐれのようなノリで聞いてきた。
からっとしていて竹を割ったような見ていて清々しい子だった。
なによりもまず静雄が和泉にキレないということが和泉が如何にいいやつであるかという証拠だ。

俺たちみたいなちょっと浮いた奴らとつるんでるのに和泉には友達が沢山いた。
人間的に尊敬できる子だった。

「もしも、もしもだけど…首より上が無い人に想いを伝えられたら…新羅は告白を受けるの?」

「当たり前じゃないか!もしも向こうから想いを伝えてくれるなんてことがあれば俺は万里の長城をスキップで越えるぐらいの自信があるね!」

友人の言葉に嬉々として答えると、和泉はふーん、と小さな声で相槌を打った。
だってこの世界で首の無い人というのはセルティのことでセルティ以外にいないからだ。
それから俺は調子に乗って長々と愛を語った気がする。

「あ、ごめんもう帰らないと」

「もうそんな時間か…俺の話しに付き合ってくれてありがとう」

次の日から和泉は学校に来なくなった。
幾日か経ってからHRで伝えられたのは、和泉が自殺したということだった。

臨也はふーん、あの子にも悩みがあったのかな?と言って面白がっているような振る舞いをしていたが時々目を伏せていた。
静雄はキレる回数が増えた上、意識が宙に浮いているようだった。

俺?

俺は…どうだろう?

何か変ったかな?

生きていく限り、社会に交わる限り出会いがあればその分別れもある。
その中の一つ一つに感情を抱くのは難しい。
性格が最悪な臨也も、すぐにキレる静雄も、清々しくて真直ぐな和泉も
俺の中では平等な価値であり、セルティ以外の者に特別な感情を抱くことも無い。
それでいい、それがいい。

今日は家に帰ったらセルティと一緒にぷよぷよをしようか
それとも最近嵌ったらしい世界名作劇場系のアニメを借りて帰ってあげようか?
フランダンスの犬にしようか、赤毛のアンにしようか、ロミオの青い空にしようか?

何年か経って、“和泉”という存在を忘れてしまうのかもしれない。
それでも別にいいや。

俺がセルティと一緒に居られる限り。



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