▼ 上手な彼女
俺の部屋に和泉が来て2時間、和泉は無防備にも俺のベッドの上に寝そべり、俺の枕を抱き抱えて胸を押し付けている。
毎晩使っている俺の枕で和泉の柔らかな胸がむに、と形を変えて、広い襟首からはチラチラといかがわしいラインが見えた。
「お、おい、そんな無防備な格好して、どうにかなっても知らないからな」
正直俺の理性はヤバい。
健全な男子高校生である俺の息子がウォーミングアップを初めているなんてのはこの無防備で無警戒な和泉は知ったことではないのだろう。
短いスカートで寝そべる物だからギリギリまでめくれ上がってしまっている。
あと少しで見えてしまいそうでゴクリと生唾を飲み込んだ。
和泉はぱちくりと瞬きをしてからリップか何かでコーティングされた艶やかな唇に弧を描かせた。
「どうにかしてくれるの?」
「っ!」
「私は準備万端なんだけどなぁ」と微笑む和泉に俺はパクパクと鯉のように口を開閉させることしかできない。
こいつ…
確 信 犯 か !
「私のこと、どうしてくれるの?どんなことしてくれるの?」
ベッドから身を乗り出して俺の頬に人差し指から薬指までを、小指は顎に沿えるだけ。
触れられているのかいないのかわからない程繊細に触れてくるせいで神経が頬に集中してしまう。
親指の腹が俺の唇を二、三回ゆっくり撫でてから滑り落とすように離れていった。
「っ、もっと…!」
「もっと?何?」
わかっているくせに和泉はこうやって俺にきちんと言うように促してくる。
女王様のように目を細めて聞いてくる和泉の表情が好きだ。
「俺に触って、キスしてくれ」
何時ものように言うと和泉は「よく言えました」と子供をあやすように俺の髪を撫でてくる。
その手に擦り寄れば和泉は小さく笑った。
「でもダメ」
「…え」
この返答は何時もと同じじゃなかた。
「たまには凛に食べられてみたいかなって思ったの」
「え…?」
「だから凛が私のこと押し倒してキスして私が欲しくて欲しくて仕方がないって本能のまま求めてくれなきゃ今日は楽しいお喋りだけです」
にっこりとた和泉から笑顔を向けられたと同時に、俺の中で本能と屈強なチキン精神の仁義無き戦いの火蓋が切って落とされた。
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