人の往来が激しい繁華街。 歩道橋から、通路を見下ろしてボーッと物思いに耽っている真名部を見つけて、皆帆は左手を上げた。 「やあ」 真名部は声をかけられた事に気が付くと、メガネをずり上げて相手をじっと見た。 「皆帆くんですか」 「なにしてるの?」 皆帆も真名部の隣に行き、片腕を手すりにのせて、話を聞く態勢になる。 「別に何もしていません」 「そうみたいだね」 「なっ」 真名部は皆帆を睨んだ。 「じゃあ何故声をかけてきたんですか」 オレンジ色の髪をかき上げて、皆帆は微笑むだけだった。 「空気よんでください」 「……わざと空気を破ったんだけどなぁ」 「はっ?」 真名部が一層キツく睨んでも、知らん顔。 「ほっといて下さいよ。僕はいま真剣に考え事をしているんです」 「あまり考えが纏まっていないみたいだけど」 「……どうしてそう思うんです」 皆帆は人差し指を突き立て、大きく息を吸った。 「顎を手すりに置いて下を眺めている風だけれど、視線は人や車を追っていない。宙空をみつめて時折ため息をついている。うわの空じゃないか」 「お得意の推理ですか」 「ご名答」 ソロバンの答えを出したみたいに皆帆が褒めたが、真名部は余計に眉間のシワを深めただけだった。 「何について考えているの?」 「推理して当てないんです?」 「もし僕が推理してみたところで正解する可能性は?」 「統計学的に10%未満です」 「じゃあ意味が無いね。自分で正解を教えてよ」 皆帆の口車に乗せられて、真名部は悔しがった。 「……ずるい人」 「ありがとう」 ふたりで歩道橋の手すりに寄りかかって空を見上げる。雲を見るふりをして互いを見ている。距離感を測りながら、すこしずつ、すこしずつ近寄っていった。 ------- ふたりの絡みが可愛いから、もっと増えてほしいです。 頭脳派コンビの勝利の解法に萌えました。 [コメント] [目次] |