大木戸研究所






PPP......

電子音。
登録していない番号だと鳴る、無機質な着信音だ。

「はい、もしもし?」

身に覚えのない番号が表示され、
俺はちょっと身構えながら電話に出る。

「……マサキ」

「あ、ああ。狩屋マサキですけど…誰?」

「ふふふ。声でわかるでしょ」

笑い声がきこえてくる。
そうだ、聞き覚えのあるこの声は…

「影山か!?」

「ぴんぽ〜ん大正解。うふふ♪」

俺はとっさに周囲を見回した。
放課後のスポーツショップで、お客さんといえば学生ばかり。
ちょっと小声で返事をする。

「教えてないのになんで俺の番号しってんだよ」

「それ聞いちゃう?」

「答えろよ」

「君って普段ケータイ持ち歩かないから今しか電話でないと思って」

「なんでそんなことまで知ってんだよ!?」

「だって……僕はマサキものだから」

ふいに肩を叩かれる。
ぎょっとして振り返るとそこには霧野先輩の顔があった。
イヤ、当たり前なんだけどさ。一緒に買い物に来たわけだし。
ピンクの髪の毛が首を傾けたせいでふわりと揺れてた。

「マサキ、いまどこにいるの?」

「えっと…家」

「そう。良かった。マサキの愛らしい姿を僕以外の人へ向けていると思うと苦しくなっちゃうんだ」

霧野先輩が「誰?」と聞いてくる。
俺は口パクで「カ・ゲ・ヤ・マ」と知らせた。

「聞いてる、マサキ」

「輝、で、なんの用だよ?」

「欲しいものってなにかあるかなーって思ってさあ」

「おめぇも買い物中なの?」

「"も"?」

咳払いしてごまかす。
霧野先輩が別の棚へ歩いて行ったのを見送った。

「マサキ、誰かそこにいるの?」

「…いないよ。俺ひとり」

「本当だよね?」

「いねーって」

「ぜったい?ぜったいにいない?」

「ウルサイな、俺の言うことが信じられねぇの?」

おもわずむきになって声を荒げてしまった。
ちょっと周りの客を気にする。

「…そうだよね。マサキが僕に嘘をつくはずがないもの。疑ったりなんかしてごめんね、君のことを思うとどうしても心配になっちゃうんだ。」

電話からする輝の声を聞きながら、俺は店の品を比べている。
西園が良いシューズを使っていて、聞いてみたら霧野先輩に選んでもらったって言ってたんだ。
だから、俺も、真似をした。
せっかく霧野先輩に付き合ってもらって新しいシューズを買いに来たからには、お気に入りのひと品を見つけたいからな。

「狩屋!これなんてどうかな?」

霧野先輩が青いシューズを持ってきた。
ちょっと前に出たモデルだけど、値段もいい感じ。

…なにより霧野先輩が選んでくれた靴だし。

「イイですね!」

「だろ? オレも使ってるメーカーの靴なんだけどさ。すっごく走りやすいからオススメだぜ」

「付き合ってもらっちゃってすみません」

「気にするなって。オレも楽しいし、いつでも相談してくれよ」

「ありがとうございます」

ケータイの画面をちらっと見る。
まだ通話中になっている。
輝のヤツ、まだしゃべり続けているのか…面倒くさいな。



先輩から靴を受け取って、レジへ向かって振り返った時。




ガラスのショーウィンドウの外から



輝がこっちをみていた。


「マサキが嘘をついたからイケナイんだ。謝ったって、無駄だよ」


電話口から静かな笑い声が聞こえてくる。

眼の前にある輝の顔は、ちっとも笑ってなんかいなかった。






ヤンデレの輝マサでした。
蘭丸←マサキ←輝であります。
大木戸研究所は輝でヤンデレをいろいろ実験チュウ。
ピカチュウ信助とは少し関係あるのかもしれない。




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