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ヘタレ風紀委員長×一般生徒

元拍手


その視線に気付いたのは高校1年の夏を過ぎた頃だった。

何処からか感じる視線を辿ると、2年でありながらこの学園の風紀委員長をしている間宮陽浩(まみやはるひろ)と目が合った。
直ぐに視線は逸らされてしまったが、時間にするとおよそ2秒程。多分俺のことを見ていた。
そしてそれを皮切りに間宮さんとは頻繁に目が合うようになった。
最初はたまたまかと気にせずにいたが、何度も続くためこれは偶然じゃないなと気付いたが、じゃあなんで俺なんかを見ているんだ?という疑問が浮上した。
自分で言うのも悲しいが、容姿も才能もこれといって抜きん出たものは無く、この学園で目立つようなことをした覚えもない。

だけどその疑問も半年も経てば解決した。
ありえないだろと自分の中で何度も否定し続けてきたが、多分間宮さんは俺のことが好きなんだと思う。
なんで俺なんかを?と自分でも思うし、好かれてる理由なんて検討もつかないが、熱を含んだ視線に確信してしまった。
戸惑う気持ちもあるが、あの人気者でカッコいいみんなの憧れである間宮さんに好意を寄せられてるのは正直嬉しかったし、同性同士だとしても思わずドキドキしてしまう。
だけど付き合うのはなぁ……
間宮さんと話したことないしどんな人なのかもイマイチわからない。
それなのに告白なんてされたら俺は何て返事をすればいいんだろうか。

そんなことを考えていたが予想に反して間宮さんは何もアクションを起こして来なかった。
拍子抜けと同時にイライラ。
そしてもうその頃には俺も間宮さんのことを好きになっていたので、早く告白してくれと思うようにもなっていた。
だけど間宮さんは相変わらず見ているだけ。
だけど明日はもしかしたらと思っているうちに学年が上がり、そして気付けば卒業式が来てしまった。
この1年半。ただただ間宮さんは俺を遠くから見つめるだけで何も言ってくることはなかった。
そんな間宮さんは今日卒業生代表として答辞を読み、この学園から卒業してしまった。


最後である今日、何かあるかもしれないと教室に最後まで残っていたし、下駄箱だって何回も確認しに行った。
だけど間宮さんからのアクションはやはり何もなかった。


日が完全に落ちきった教室から出て行き、一直線に寮の食堂へと向かった。
そして目的の人物……間宮さんは既に食堂におり、間宮さんから見えるであろう位置に俺は腰を下ろした。
直ぐに視線を感じ、視線の方を見るとバチッと間宮さんと目があったが相変わらず直ぐに逸らされてしまう。

どのぐらいそうしていたかわからないが、生徒の沸き立つ声に間宮さんが席から立ったのがわかった。
食堂から出るには俺の横を通るしかなく、それが最後のチャンスだぞと素知らぬふりをして待っていた。
だけど通り過ぎる瞬間、こんな近くを通るのは初めてだなと思うと我慢出来ずに間宮さんの方をチラリと見てしまった。
間宮さんは名残惜しそうな瞳でこちらを見ていたが、直ぐに前を向いてそのまま歩いて行ってしまった。

「……この野郎!!」
そんな顔するぐらいなら何か一言でもいいから言えよ。
何も望んでないって振りしながらも飽きもせず毎日毎日視線だけ送ってくる。
なんだよ!なんだよ!なんだよ!
期待ばっか膨らませてた俺が馬鹿みたいじゃないか。

立ち上がり、間宮さんを追いかけた。
勢いのまま間宮さんの手首を掴み、驚いているであろう後ろを振り返ることもせず、ただただ走り続け、あまり人が通らない非常口前へとつれていった。


「……つと、むくん!?」
「俺は今日までずっと間宮さんが声をかけてくれるのを待ってきました。今日こそはもしかしたらと何度思ったかもわかりません……」

「間宮さん、今日で卒業ですよね?……何か言うことはないんですか?」
なんでもいい。ただ早く確信し続けていたことを言葉にしてほしい。







補足

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