other | ナノ

未来なんてまだわからない

今日、好きな人が結婚してしまう。


勝手に決められた相手だけど、「とっても良い人だったよ」と先生は笑って言っていた。
こっそり相手を見に行ってみたが先生の言った通り、穏やかな優しそうな女性で先生とはすごくお似合いだった。
『お前との関係は単なるお遊びで、これが本当の幸せだ』と突き付けられた気分だった。
追い討ちをかけるように2人のデートを見せつけてきた先生のお兄さんには「お前じゃあいつを幸せにできない。俺だって無理なことをお前ができるはずがない」と言ってきた。

わかってる。わかってるってば……
先生と俺じゃ年齢差もあるし、まだチンチクリンな俺じゃ先生を守るどころか幸せにだってできやしない。
何も後ろ盾もない弱い自分が無責任に『俺が先生を幸せにする!』とも言えないことも理解している。
だけど、だけど俺は本当に先生が大好きで、先生のお兄さんにだって、先生の結婚相手にだって誰にだって絶対に先生を渡したくない。
そりゃ先生のお兄さんみたいにカッコよくて権力もある大人じゃないし、先生の結婚相手みたいに将来先生の子どもを産んであげることだってできない。
それでも俺は先生といたい。先生が好きだ。
どんなことがあろうと、先生を手放したくなんてない。



現実を見せるためにわざわざ式場の場所を教えたことを後悔しやがれ!
そーですよ、そーですよ。まだまだガキな俺は世の中の常識なんて知ったことか
大好きな人が、目の前で自分じゃない人と幸せになるなんて許せるわけがないがないだろうが!
俺がその人よりも何倍も何十倍も何百倍も先生を幸せにしてやるんだから


驚いた顔をする先生の手を掴むと、「お前いい加減にしろ。今何しようとしてるかわかってんだろうな!」という先生のお兄さんの叫び声が聞こえた。

「うるせーーーー!!!!何もかもわかった上での結果がこれなんだよ。先生の未来を俺が潰そうとしてることも、この先後ろ指指されて生きていくことも承知してる!
だけど俺には先生が必要なんだよ。先生は俺が居なくても生きてけるかもしれねぇけど、俺はそんなの無理なんだ。俺は先生が好きで好きで、先生が居ない未来なんて考えたくもない。だから俺は先生と一緒になって幸せになる未来を選ぶ」
先生の幸せを願うなら、大人しく身を引かなきゃいけないなんてわかってる。
だけど無理だ。どんなに先生のためだって考えても、先生が大好きな俺は先生を手放すことなんてできなかった。
この先のことを考えると正直怖い。今だってわざわざ式に乱入して先生を掻っ攫うなんて馬鹿げたことをしてることに足が震える。

それでも、先生が俺の隣で笑ってる。
それだけで俺は幸せなんだ。


「うおーーー!先生行くよ」
「君は本当にすごい子だ」
「おい、待ちやがれ!」
「ぎゃー!!来てる来てる。先生頑張って走って!!!」
「はははは」
「笑ってる場合じゃないってば!」
どこまでもどこまでも先生となら俺は走り続けられる。








補足

prev / next

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -