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ワンコ後輩×お人好し先輩

「結論から言わせてもらうと、『何言ってんだ』って感じね。恋人、すぐ出来るわよ」
「え?本当ですか?」
「1ヶ月……1週間……いや、3日以内に」
「そんなすぐに!?」
俺がずっと悩んでいたことだったのに占い師は「大丈夫大丈夫」とそう軽く笑い飛ばした。





30歳を過ぎても結婚はおろか彼女すら居たことがなく、そのことに危機感を持ち、俺は初めて婚活パーティーに参加した。
そこで出会った女性と順調に進んでいると思っていたが、デート当日『ごめんなさい。電車の中で久しぶりに元カレに会って、彼と話してるうちにやっぱり彼のことが好きだってことに気付きました』とドタキャンをされた。
既に待ち合わせ場所に着いていた俺はその連絡にただただ呆然とし、だけど彼女に対して何も返さないでいるのもどうかと思い、『お幸せに』とだけ送ってその場で大きく溜息をついた。

きっとこの世の中に俺のことを好きになってくれる人なんて誰も居ないんだ……


一気に自分に自信が無くなり、フラフラとした足取りの中、たまたまあった占いスペースに俺は足を止めた。
今まであまり占いを信じたことはなかったが、少しでも俺の未来が明るければいいな、と占い師に今後の恋愛事情について見てもらうと、3日以内に恋人ができると言われた。
そんなバカな……、と占い師の言うことを信じられずにそう思っていたが、それからちょうど3日後、本当に俺には恋人ができた。

「先輩好きです!」
「長谷川(はせがわ)……今勤務中だから」
ただ、彼女ではなく彼氏だった。
しかもめちゃくちゃイケメン。








どこから聞き付けたのか、突然会社の後輩である長谷川に「先輩、恋人募集中なんですか?」と尋ねられた。
4つも年下で、しかも会社の女子社員からモテモテな長谷川に対し、あまりにも先輩としての威厳がなさ過ぎて「……まぁな」と小さく返事をすると、「じゃあ俺にしましょうよ。ね?ね?」とグイグイと来られた。

「は?何言ってんだよ」
「入社した頃からずっと先輩のことが好きで、先輩への思いは誰にも負けません!絶対俺が先輩のことを幸せにしますんで、どうか俺にしてください!」
いつもはヘラヘラと緩い笑顔を見せている長谷川なのに、今日は真剣な目でこちらを見つめてくるから、その顔の良さにドキドキしてしまう。

「……本気?」
「当たり前です!」
相手は男で、しかも後輩だとわかっているが、初めてぶつけられる好意に戸惑いつつも、その告白自体はとても嬉しかった。
こんな俺でも好きだと言ってくれる人が居るんだなんて、3日前の出来事に未だ落ち込んでいた心に染み渡る。
だけどそれとこれとはまた話は別で、男同士だし、どうしようかと悩んでいると、沈黙が長く続いたせいか「先輩……」と長谷川に声を掛けられた。

「俺じゃ、ダメですか?」
眉をハの字にし、不安そうな声で聞いてくる長谷川に「大丈夫に決まってるだろ!!」と思わずそう答えてしまった。

前々から長谷川のこの顔に俺は弱かった。
今はもうミスはほとんどないが、入社した頃は他の同期達よりもミスが多く、その度に叱ろうとするが、「すみませんでした」としょぼくれた顔で謝られるとなんでも許したくなり、結局「いいって。気にすんなよ」となんでも許してしまっていた。

俺の返事を聞いた長谷川はパーッと顔を輝かせ、「先輩、大好きです!」と言ってきた。
イケメンの笑顔はキラキラしており、あるはずのない尻尾もブンブンと振られていた。







補足

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