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束縛×容認

最近よく、本性出てきたなー……と思う。

「店員と目合わせないで」
「俺、店員と目合わせてた?」
「合わせてた!!!ダメ!!颯太(そうた)は俺以外見るの禁止。破るならコンビニにはもう行かせない」
たかがコンビニで買い物をするだけでもイチイチ口を出してくる。多分お会計の時に無意識に店員を見てしまっただけで、別に俺は店員を見たかったわけでも、目を合わせるつもりも全然なかった。
というか大輝(だいき)が嫉妬するのをわかっていてそんなことするわけない。




2ヶ月前、同じクラスの矢那川(やながわ)大輝に告白された。
顔も性格も良く、誰にでも優しい大輝はクラス内に収まらず、学年でも有名な人気者だった。そんな大輝と同じクラスではあるものの特に接点はなかった。
俺はクラスの地味グループに所属しており、大体は教室の隅っこで自分と似たような友達と小さくかたまっているぐらいで、同じ教室の中に居たとしても俺と大輝はほぼ話したことはなかった。
……なかったけど、なんとなく大輝からの好意には気付いていた。
俺は常に大輝から視線を感じていた。ふと視線を感じて辿ると必ず大輝からの視線だった。
だけどその視線は好きだというような甘くとろけるような優しい視線ではなく、ドロドロとした重さを感じさせるような熱っぽい視線。
それに気付いた瞬間、身体がヒリついた。ゾクッとした。
あー、これは逃げられないなと覚悟を決めるしかなかった。多分逃げたって意味がない。どうしたって最終的には大輝に捕まえられてしまう。
それに、『優しい』と言われている大輝の裏の顔にそんな悪い気はしなかった。俺にしか見せない大輝で、俺しか知らない大輝。俺がそんな風にさせているのかと思うと嬉しかった。
ただ度合いには結構驚かされた。
友達とのボディタッチが許せないのはまだわかるが、笑顔で会話したり、ただ隣を歩くのすら気に入らないのか、鋭い視線を向けてきた。
多分何もかもがダメなんだと思う。
でももうその時の俺は嫉妬深い大輝にトキメキすら覚え、『それなら早く告白してこいよ』と今か今かと大輝からの告白を待っていた。
大輝が告白して来ないなら俺は今まで通り友達と話すし一緒に行動するし楽しいことがあれば笑いあってその時にボディタッチだってするかもしれない。
それでいいんだな?と少しだけ友達との接触を増やし大輝を煽ってみると、直ぐに呼び出された。

予想に反して照れたように「ずっと好きでした。付き合ってください」とテンプレのような告白をしてくるので驚いた。
もっと嫉妬心丸出しで、『俺以外を見るな』とか言われるかと思っていた。
もちろん返事にはOKし付き合い始めたが、一緒に過ごす時はただただ優しくされた。それはまるで『顔も性格も良く、誰にでも優しい大輝』であまり面白くなかった。
嫉妬心も束縛も見せず、「友達と仲良いよな」と笑顔で言ってきた時は固まってしまった。
そのくせ一緒に過ごせない学校の間は今まで以上に鋭い視線を向けてくる。
付き合い始めたことで確実に独占欲や嫉妬心が膨らんでいるだろうに、大輝はそれを必死で隠そうとしている。隠さなくてもいいのに。


1ヶ月過ぎても優しく紳士なままだったが、ある放課後「颯太って友達との距離近くない?……少しだけ、妬けるな」とこちらをうかがいながら言ってきた。別段俺は友達との距離が近いわけじゃない。大輝を煽る時に少しだけ友達との接触を増やしたが、それ以降はまた普段通りに戻した。

「そうかな?」
「そうだよ……妬けちゃうから、もうちょっと離れてくれると嬉しい」
控えめながらも嫉妬心を出してくる大輝にゾクッとした。だけどきっと大輝の嫉妬心はこんなもんじゃない。もっともっと欲深く、小さなことでも許せなくて、嫉妬心を募らせている。
いつも向けられてる視線でそれを痛いほどわかっている。がんじがらめにするようなあの視線はこんな小さな嫉妬じゃなくて、もっともっと重いものを含んでいるはずだ。



やはりその通りで、それ以降どんどん独占欲が溢れ出してきた。
『友達と一緒にごはん食べないで』
『俺以外に笑顔を向けないで』
『必要なこと以外他の人と喋らないで』
『友達なんていらないでしょ?』
『連絡先は家族と俺以外のは全部消して……家族のだって本当は嫌だ』
『颯太を誰にも見せたくないし、颯太には俺以外誰も見てほしくない』
顔も性格も良く、誰にでも優しい大輝。人気者で憧れの的で、女子からも男子からもモテている大輝。
そんな大輝なのに、俺が好きすぎる故に嫉妬心を隠せない。優しさよりも独占欲が優先される。それにたまらなくトキメイた。



「もういっそのこと大輝の家から一歩も出ずに生きようかな。そうすれば目を合わせるどころか、誰にも会わずに済むだろ?」
「本当!!!それすごい良い案」

俺も大好きだよ、大輝
大丈夫。他の人なんて見る余裕なんてないから。







補足

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