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美形×あざとい平凡

昔から何故か『可愛いね』と言われることが多かった。
別に顔が良い訳でも、身長が平均より低く可愛い感じという訳でも無かったが、『花谷(はなや)ってなんか可愛いよな』と男女問わず言われ続けてきた。

大学に入りようやくその謎が解けた。
僕は無意識に可愛い仕草をしてしまうらしい。
考え事をする時は無意識に口元に人差し指をあててしまったり、話してる時相手を上目遣いで見てしまう。
意識してやっていなかったが、確かに意識して自分の行動を思い返してみると、確かに可愛いと言われる仕草を僕はよくやっていた。

ただそんな僕に今は『よくやった』と言いたい。

最初は夢野(ゆめの)のカッコ良さに、『世の中には本当に芸能人よりも顔が整った一般人っているんだな』と驚き、近くにいればその存在感の大きさに目を奪われるぐらいだった。
だけど気付けば自分から夢野の姿を探し、見付ければずっと目で追いかけるようになっていた。
その時にはもう夢野のことを好きになってしまったことを認めざるを得なかった。
葛藤がなかったと言ったら嘘になるが、存外同じ男を好きになることに抵抗はなかったし、好きになったもんは仕方ないかとストンと自分の気持ちを認められた。
ただ自分の気持ちは認めたものの今後どうしたものか、と。
男同士というハードルの高さもあるが、そもそも夢野みたいな美形が僕みたいな平凡に振り向いてはくれないだろう。

そんな風に思っていたが、僕を見て夢野は「可愛い……」と呟いた。
総勢40〜50人参加の学科での飲み会で、たまたま目の前に夢野が座った。必死に冷静を装い、隣に座る友人と喋りながらご飯を食べていたが内心ドキドキが止まらず、ずっと緊張と恥ずかしさで前を見れずにいた。だけどそんな状態で当然目の前にいた夢野が「可愛い」と呟いた。

「え?……可愛い?」
「あっ、ごめん。いや、口の中に物をいっぱい含ませて頬が膨らんでる花谷がすごく可愛くて……」
『可愛い』という声に驚いて夢野の方を見ると、僕の方をずっと見ていたのか、夢野と目が合った。ただ目が合っただけなのに、それだけで嬉しさと恥ずかしさで身体が熱くなる。
しかも夢野が僕を見て可愛いと言ってくれた。

「わかる〜!!あと花谷くんって話す時よく上目遣いになるよね!それもすごい可愛い〜〜」
「そ、そーかな?」
「ほらほら、今も口元に人差し指あててるじゃん!可愛い〜」
夢野の隣を陣取っていた女の子にまで『可愛い』と言われ、そうかな?と無意識に口元にあてた指も指摘された。

「確かに花谷って可愛い仕草多いよ」
友人にまでそう言われるが、男の僕が可愛い仕草してもイタイだけでしょと告げるが、「可愛い仕草が自然で、花谷に似合ってるからイタさは無い」と言われた。
そんなバカなと、あえて両手をグーにして顎元に添えるぶりっ子ポーズで友人や女の子を見ると声を揃えて「可愛い」、と。

「……可愛いかな?」
「ん。すごい可愛い」
友人や女の子だけじゃなく、勇気を振り絞って目の前にいる夢野にも同じくポーズを取り見つめると、夢野は甘い顔で笑い『可愛い』と言ってくれた。
今まで夢野みたいな美形が僕みたいな平凡に振り向いてはくれないだろうと一切自信がなかったが、その瞬間『イケる』と自信が湧いてきた。

「夢野にそう言ってもらえるなんて、すごくすごく嬉しいな」














最近、花谷にしか目がいかない。

あまり接点はなかったが、可愛い仕草をする花谷によく癒されていた。
あのくしゃっとした笑顔が特に可愛く、だからあえて飲み会の時にその顔を堪能しようと目の前に座った。案の定可愛くて可愛くて……。
思っていたよりも何十倍も目の前に座る花谷が可愛くてメロメロになってしまった。
頬を膨らませご飯を食べる花谷、上目遣いで俺を見つめる花谷、ちびちび飲み物を飲む花谷。全部全部可愛かった。
そして飲み会後、教室で目が会うと必ず微笑んで手を振ってくれるようになった。
会話も増え、「夢野って字綺麗」「夢野の手ってあったかい」「夢野のジュースひとくちちょーだい」「夢野、今僕のお尻見てたでしょ?えっち」、と。
花谷の全てが可愛くてもう目が離せない。








補足

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