短編 | ナノ

強面×平凡

いつもと変わらない振りをしているけど、実は今日の俺はめちゃくそ可愛い下着を着けてます。
数ヶ月振りに合う恋人。そりゃもう数日前からウキウキのワクワクで、久しぶりに会うし勿論事を致すだろうなぁと気合いも入るわけで、柄にもなくネットで男性用下着なんか探しちゃってポチッとしちゃいましたよ。

白いフリルがあしらわれた上下セットの下着はすごく可愛く、ポチった時はテンションがこれでもかってほど上がっていて、もし彼女がデートの日にこれを付けてくれてたら嬉しいなと思った勢いで買ってみた。
が、よくよく考えなくても俺は男で、女の子が着たらもちろん可愛い下着セットだけど、男の俺が着たらただの変態で、現物を見てとても後悔した。
なんでこんなの買っちゃったかなぁだけどやっぱ可愛いなぁと何度も何度も服の上から下着を合わせてみては、『うわぁ……』となりながらもようやくデートに着て行く決心をつけた。

いいんだ俺はどう思われても……、ただ正隆(まさたか)に俺が正隆と会うのを楽しみにしてたんだなって伝わればそれでいい。


大学時代はいつでも一緒に居られたのに、社会人になってから向こうが研修で地方に数ヶ月、直ぐに勉強のために遠くにある支社に数年と一気に距離があいてしまった。
一応相談まがいのはされたが、それも相変わらず何か怒ってるのか?と思うようなギュッと眉間に皺を寄せた怖い顔で「のちのち本社に戻ってくる」とだけ言われただけだった。
強面なイケメンで一見近寄り難いが、話してみると実は口下手の優しい性格をしている正隆に今でも俺はベタ惚れだ。
だからこそ実は外見とは裏腹にすごく紳士的で優しい正隆を知った支社で働く女性社員が猛アタックしてるのではと日々気が気じゃない。

遠距離になってしまっても俺の気持ちは変わらないが、正隆は俺のことどう思ってるのかはわかるようでわからない。
こうやって数ヶ月に1度飛行機の距離なのに会いに来てくれたり、連絡もマメにしてくれるところは愛されてるなぁとは思うが、実際は向こうで良い人が出来てるかもしれないが優しいから俺に別れを言い出せてないだけとか……
考えただけでも泣けてきた……
ともかく一方的でもいいから、今でもこんなに俺は正隆のことが大好きなんだと恥ずかしがらずに伝えていかないと平凡な俺じゃすぐに女の子達に負けてしまう。






正隆が帰りやすいように空港に直結した駅から数駅の場所が俺達のおきまりのデートコース。
久しぶりに会った正隆は相変わらずの強面イケメンで、思わず隣を歩く正隆を横目でチラチラ見ているとさすがに見過ぎたせいで目が合ってしまった。

「どうした?」
「いや……久しぶりに会えてすごく嬉しいなぁって……」
「ああ俺もだ」
眉間の皺が少し緩み、強面が緩和された正隆にキューンっと胸が高鳴った。
言葉もあいまってトキメキが止まらない。やばい、俺の彼氏カッコ良すぎだろと惚れ直してしまうのも仕方ない。
いつもは画面越しで会話する正隆が今は隣に歩いてるだけでも嬉しくテンションが上がるが、それ以上にデート中、トイレに行くたびに『そうだ今日俺、可愛い下着履いてるんだ』と未だかつてないほどテンションが上がっていく。
だけど必死になんでもない振りをしてカフェで最近の話ついでにここ数日仕事が立て込んでて疲れたという話をすると、正隆は「そうか……大変だったな」と労ってくれ、ここ数日の疲れも直ぐに吹っ飛んだ。

そろそろ日が暮れてきたなぁとドキドキしながらこのあとについて正隆に聞くと「樹(いつき)疲れてるようだし、今日はこのまま向こうに帰る」と言われ、思わず「えっ……?」と笑顔のまま固まってしまった。
事前に明日の便で帰ると聞いていたから期待してウキウキのワクワクで柄にもなく可愛い下着を買って準備をしてたのに、と目に見えて落ち込んでしまった。
突然の落ち込みように不思議そうな顔をする正隆に、ガッカリしながら「今日すごく可愛い下着履いてるんだ」と可愛い下着に日の目を見せてあげようとズボンをズラして、正隆にパンツを見えるようにすると、ガタンと正隆が突然席から立ち上がった。

「正隆?……ど、」
「なんだそれ……今日1日そんな下着で俺とデートしてたのか」
表情が伺えずどうしたのか聞こうとすると、反対にいた正隆は俺のところまで来て、耳打ちでそう言ってきた。
言われた言葉を理解し、恥ずかしさから身体が一気に熱くなり、それと同時にとんだ変態だと呆れられたかと不安になる。

「エロっ……俺に抱かれたかった?」
「な、いや、……」
やっと伺えた正隆の表情はどこか熱っぽく、呆れられたんじゃなくて興奮してくれてるんだとわかり安心したが、今度はいつもは言わないようなセリフや、雰囲気の違う正隆にドキドキしてしまう。
徐々に興奮がこっちにまで伝染し、身体がさらに熱くなり、恥ずかしさから正隆の目が見れず、あちこちに視線が泳いでしまう。
だけどこんな下着を1日付けてて恥ずかしさなんてとうに限界突破しているじゃないかと覚悟を決めた。

「うん……可愛いやつにしたからちゃんと見てほしい」
もう一度ズボンをズラして見えるようにして誘うと、勢いよく手首を掴まれ席から立たされた。





朝目を覚ますと見知らぬ部屋だったが、ベッドに腰掛けてこちらに背を向けた正隆を見付け、一気に安堵する。
そしてそういえばと昨日のことを鮮明に思い出し、幸せの笑いが出そうになった。
いつもは優しく丁寧な正隆だったが、昨日は少し乱暴で激しかった。
だけどあれはあの可愛い下着を喜んでくれてたからだよなと思い、また何かしたいなぁと、次は定番の裸エプロンか?と思考を巡らせた。







補足

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