短編 | ナノ

真面目先輩×女神平凡2

これの続き


眩しさを感じ、ゆっくり目を開けるといつもの光景が目に入った。
また俺は終電逃して会社で寝てしまったのか……
相変わらずの職場の天井を見つつ、昨日何処まで仕事を終わらせたのか思い出してると、「あれ?」と心地良い声が聞こえてきた。

「起きたんですね。おはようございますよく眠られてましたね。」
「……」
声のした方を見ると、優しい微笑みを浮かべた女神がそこにはいた。
……いや、違う。女神じゃなくて北見か。
ああ思い出してきた。昨日、北見に膝枕されながらオチたんだった。
温かくて気持ちが良く、もっとあの手を感じていたかったが、日頃の疲れが溜まっていたせいで我慢出来ず直ぐに眠ってしまった。
実に勿体無いことをしたな。また撫でてくれないだろうか……
起きたばかりでぼんやりとした思考の中北見をボーッと見ていると、再びふんわりと笑った。
可愛い……

「これ、どうぞ。」
両手に持っていたマグカップのうち一つを手渡渡され受け取ると、甘い良い香りがした。
これカフェオレか……
昔から甘いものが好きな俺には嬉しい品だ。
昨日から色々貰いっぱなしで申し訳ないな。
まだ湯気が出ており、ゆっくり口に含むと甘さが口に広がった。

「美味い。ありがとな」
「いいえ、どういたしまして」
チラッと北見を見たあと視線を落とした。
ちゃんと俺は自然を装えているだろうか

前々から北見のことを俺は知っていた。
前に上司や後輩の後始末にイライラしている時に限って書類を床にバラまいてしまい、イライラの中書類を拾っていると、通りかかったんだろう北見が書類を拾ってくれた。
「どうぞ。よければこれも受け取ってください」と拾ってくれた書類を渡された時に一緒にチョコレートも渡された。
いつもの俺なら他人からの物なんて何が入ってるかわからず、信用ならないため「いらない」と返すが、北見の優しい笑顔に思わず受け取ってしまった。
捨てる気にもならず、『まぁいいか』と口に含むとチョコレートの甘さが口に広がり、さっきまでのイライラもスーッと消えていった。

その後俺は北見と話す事はなかったが、何度も廊下ですれ違い、名前を知り、部署を知り、ずっと目で追いかけていた。
今回のことで再確認したが、北見という人間は可愛く優しく温かく、きっと女神に違いない。









「お疲れ様です」
遠くの方で聞こえた声に、もうそんな時間かと残念になる。
女神が帰ってしまう。
あの一件からさらに北見のことを意識するようになった。
何でもない振りをしようとするが、目が合うと視線を逸らすこともできなくなった。
前はもう少し普通を装えていたんだけどな……

女神は帰ってしまったし、そろそろ俺ももう帰るかと手を動かしていると、「えいっ」という声と共に目の前のパソコンの画面が消えた。

「……おい、涌田何やった」
「あれー?スマホの充電器のコード抜いたんすけど、これ先輩のでした?さーせん」
机の下で何やってるのかと思えば、充電器のコードと間違えて、パソコンのコードを外しやがった。
余計なことしやがってとパソコンの電源を入れなおし、続きをやろうとしたがファイルが見つからない。
全身の血が引くのがわかった。そういえば、保存した覚えがない。
まさかこの時間から最初からやり直し?
涌田を怒る気にもならず、大きく息を吐いたのち、指を動かしはじめた。


「はぁぁぁぁあ」
やり直し作業は早い段階で終わったが、帰る直前に見付けてしまった涌田のデスクにある期日直前の書類も仕上げてしまい、気付くととっくのとうに陽は昇りきっていた。

「おはようございます。あれ?もしかして寝てません?」
「北見……」
「はい、北見です」
突然ひょこっと現れた女神の姿は疲れがピークだからかいつも以上に輝いて見える。

「お疲れ様です」
「ああ、すごく疲れた」
女神の前だからか自然と本音がポロっと口から出てしまう。
驚いた顔をしたあと、悩み始める女神に目が奪われる。素敵だ。

「あの……疲れたならおっぱい揉みます?

「揉む」
突然の言葉に思わずさっきまでの疲れが吹っ飛んだ。







補足

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