短編 | ナノ

強面×平凡2

怖いと言われる見た目にプラスして口下手なせいもあり、あまり話し掛けられることはなかったが、そんな中大学入学早々樹(いつき)は臆せず俺に話し掛けてきた。
そのことがきっかけでよく樹と過ごすようになったが、樹と一緒にいると心地よく、いつしか俺は樹を好きになっていた。
だけど告白して今の心地いい環境を壊したくなくてずっと自分の気持ちを隠し続けていたが、そんな中、突然樹から告白をされた。
思ってもみなかったことに驚いて返事が遅れたせいで、樹にいらぬ誤解を与えてしまったが、なんとか自分の気持ちを伝え、晴れて樹と恋人同士になれた。
夢のような日々を過ごし、これからもずっと一緒にいたいと思っていたが社会に出るとそれも叶わず、研修だなんだとせっかく2人の会社の中間地点に引っ越したのに家にも帰れない。
やっと研修が終わったと思うと次は勉強のために支社に行くことになり、人生で初めて絶望というものを味わった。
優秀さが買われたということで喜ばしいことだが、樹と離れ離れになるのに喜べるわけがない。
それに前々から社会人になったら樹より後に帰ってきた俺がエプロン姿の樹に迎えられるという妄想を何度もしてきたというのに、未だ叶えられていない。そもそも俺が家に帰ってないからな!

研修が終わった日に樹に会い、明日から直ぐに支社に行くこと、のちのち本社には戻ってくることを伝えると悲しい顔をされた。
その姿に胸を締め付けられた。離れるのももちろん寂しいが、もし俺がいない間に樹の前に良い人が現れたら俺は捨てられてしまうかもしれない。
そうしたら俺は何をしてしまうかわからない。
樹の心が離れてしまわないように、出来る限り会いに行き、連絡も日々とりあった。





いつもの待ち合わせ場所にはすでに樹がいた。
相変わらずな姿にホッとすると同時に会えた嬉しさが込み上げる。
樹だ。樹がいる。
もっと堪能していたかったが、樹が俺の存在に気付きニコッと笑い、やっぱりこっちの方がいいなと樹の隣に向かった。

「久しぶりだね。元気だった?」
「ああ。樹は?」
隣に樹がいる。ああ幸せだ。
本当は周りを気にせず手を繋いで歩いたり、今すぐにでもギュッと樹を抱きしめたい。
だけどそんなことをして樹に嫌われたくないので、欲望は心の奥底にしまっておく。

『映画どれ見ようか……』と悩む樹から目が離せない。
なんでこんなに可愛いんだろうか。
遠距離だからか、久しぶりに会うたびに気持ちが膨れ上がっていく一方だ。
外では叶わなかったため、上映中は暗いのをいいことに樹の手を離さなかった。
本当はもっと密着していたかったが、ウザがられたら立ち直れないなと手だけで我慢した。
映画後はご飯を食べて、カフェでお茶をして樹の話を聞いているとここ数日仕事が立て込んでて疲れたという話をされた。
これは遠回しに疲れてるから今日は出来ないということか?と考え、ガッカリする。
樹と会えただけでも十分嬉しいが、やっぱり久しぶりに会えたし樹を堪能したかったなと残念な気持ちでいっぱいになる。

その後もたくさん樹の話を聞き、今のところ樹に悪い虫は付いてないなと安心していると、このあとについて聞かれた。
久しぶりだし一緒に寝て我慢できる自信はなく、我慢できなくて襲ってしまい疲れてる樹に無理をさせたくないなと思い、帰ることを伝えると目に見えて樹が落ち込んでしまった。
どうしたのかと聞こうとすると、パッと顔を上げた樹が「今日すごく可愛い下着履いてるんだ」とズボンをズラしてパンツを見えるようにした。
プツンと多分、理性が切れた音がした。
久しぶりの樹からの予想だにしていなかった行動に思わず息が上がってしまう。
突然立ち上がった俺に驚く樹に耳元で「今日1日そんな下着で俺とデートしてたのか」と呟くと樹は身震いを起こした。
今日1日、待ち合わせの時から今までなんでもないような顔をしてずっと樹があんな下着履いてたのかと考えると、理性なんて保ってられる訳がない。
思わず「エロっ……俺に抱かれたかった?」と聞くと「な、いや、……」とウルウルした目で樹が視線をあちこち彷徨わせるからさらに興奮する。
誰だ……俺の恋人をこんなにエロ可愛くした奴は……

もしかしてやっぱり誰か樹に手を出して……と考えていると、俺の服の裾を掴み、上目遣いで
「うん……可愛いやつにしたからちゃんと見てほしい」ともう一度ズボンをズラしてパンツを見せてきた。
そこからもう覚えてない。
覚えているがずっとただただ俺が樹にがっつきまくった醜態の嵐。
いつもは樹に満足してもらえるようにしていたが、今日はそんなことを考えている余裕もなく、気が付けば朝になっていた。
無理させ過ぎた後悔と、がっつきすぎた後悔で、寝ている樹が可愛くずっと見ていたいのに後悔から見ていられない。
ベッドに腰掛けてはぁ……と深いため息をついた。







補足

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