ナルト火影 シカマル補佐 君がため 「あー・・・」 火の国、木の葉の里。 忍の隠れ里の頂点に立つ者の部屋。 いつもは何かと騒がしいその火影の部屋で、今は青年が一人溜息をついていた。 金色の髪は日の光が当たって眩しく、いつも明るく澄んだ空のような蒼の瞳は、少し疲れが浮き出ていた。 その二つの色を持つのは里に一人だけ。 部屋の主、火影の羽織を身に付けた、うずまきナルトである。 「やっぱり俺には難しいってばよぉ。」 もう一度大きな溜息をつきながら、書類の海と化した仕事机に突っ伏した。 火影として働く彼の周りには、下忍からの同期達がいる。 いつもは下忍の時から世話をやいてくれているサクラ等が助けてくれるのだが、今日は運悪くみんな出はらっている。 いや、近くに一人だけいるのだが・・・。 『やっぱ頼んじゃおうかな・・イヤ、でも・・・』 とりあえず簡単なものからやっちゃおう、と机から体を起こした。 椅子に座りなおすと、ナルトは丁度近づいてきた気配に気づいた。 「失礼します・・・って、なんだナルトだけか?」 「まーなー。お疲れシカマル。」 火影室に入ってきたのは同期の奈良シカマル。 いち早く中忍になってから頭角を現し、今は火影補佐やら策略部のエースやら、頭脳派の第一線で働いている。 「どうしたんだってば?」 「あぁー、めんどくせーが解部の仕事分を取りにな。」 シカマルは机の端に腰かけ、ナルトの頭に優しく手を乗せた。 「ってのはついでで、ナルトの顔見に来たんだよ。」 ポンポンと頭を撫で、優しく微笑んだ。 そう、シカマルはナルトの補佐で、恋人でもある。 「あ、ありがとってば。」 ナルトはつい顔を赤くして俯いてしまった。 それもシカマルには可愛くてつい笑ってしまう。 「うー・・あ、解部の仕事はあっちの机の上だってば。」 「・・・おいおい俺には山が見えるんだけどよ。」 「あの中のどれかだってば!」 「・・・。」 探せと。 「はぁー・・めんどくせー・・。」 昔からの口癖を携えてシカマルは書類を探し始めた。 「随分と仕事溜まってんじゃねぇか?」 シカマルの問いにナルトの体がギクっと音が出そうなくらいはねる。 「ま、まぁなー・・イヤそこまでは、うん。シカマルのが大変だろ?」 その様子に気づかないシカマルではないわけで。 書類を探す手を止め、ナルトの机をザッと見る。 そしてその中から数枚の書類を抜き取った。 「・・・っあ!」 「・・これ、お前に出来んのかよ?」 それはナルトがずっと考えあぐねいていた書類達。 くしくも、一番その事で頼りたかった人物の手の中に収まっているのだ。 「で、出来るってばよ!チョー簡単だってば!」 「提出直前だぜ?」 「・・・・・・。」 プイっと顔をそむけたナルトにシカマルは全てを察した。 「俺がやってやる・・」 「ダメだってば!!」 大きな音をたててナルトは椅子から立ち上がった。 そしてすぐ、しまったという顔になる。 「ハァー、何ムキになってんだよ。」 「お、俺にでき・・」 「無理だろ、この馬鹿。」 「なっ・・・!?」 シカマルはナルトの言葉を遮りキッパリと言い放った。 「だーかーらぁ」 そして憤るナルトの頭にそっと手をそえた。 「そのための俺だろうがよ。」 「シカ・・・。」 でも、とナルトは俯いてしまった。 「で、でも!俺ってば、いつもシカに頼ってばっかだから・・・今日はサクラちゃん達もいないし、ちょっとでもシカを楽にしたくて・・・!」 「・・・ナル。」 こつん、とおでこがぶつかり合った。 「まぁ、不本意だが確かに俺は忙しいし、当然めんどくせーことは嫌いだ。」 「・・・知ってる。」 いつも見てるからよく知ってる。 「でもな、俺はナルには頼られてぇ。」 その言葉に、陰っていた蒼の瞳が漆黒の双眸を見上げた。 「お前に頼られて、必要としてくれて、お前のために働けるなら、すげぇ嬉しいぜ?」 「・・シカ・・。」 少し照れくさそうに、でもハッキリと見つめられてナルトの顔は赤くなってしまった。 それでもまだ不満なのか、ナルトは眉毛をハの字にしている。 「じゃぁ、シカのために・・何してあげればいいってば?」 「んー、そうだなぁ。」 本当は傍にいてくれればそれでいいのだが、ナルトが納得しなさそうなのでシカマルも少し考える。 「じゃ、一番に俺を頼れよ。」 「・・・いつも頼ってるってばよ?」 「バーカ、それでいいんだよ。」 「なんか・・・ズルイ答え。」 おでこをつき合わせたまま少し見つめあって、二人とも小さく笑いだした。 そして自然と唇が重なる。 その後にまた二人で笑い出してしまった。 時間を確かめ、シカマルは愛しげにナルトの髪をなでながら書類を持ち直した。 「さーて、仕事しねぇとな。愛しい火影様のために。」 「プッ、お願いしますってばよ。」 全ては ただ一人 君のために end. 原案は漫画で考えてたから小説にするとめんどかった(泣) 小説TOPへ TOPへ |