今はまだ 「早く来すぎた…よな。」 街の一角で、いつもより少し着飾ったシカマルがため息混じりに呟いた。 腕時計を見やってはそわそわとする。 その姿は待ち合わせに早く着いてしまった人間がよくするもので。 例外なくシカマルもその部類の一人なのである。 やっと手に入れた恋人との、待ちに待った初デートなのだ。 「…し、シカマル!」 「おー…!っ、う、な、ナル、ト?」 表面ではいつも通りぼんやりと、内心は落ち着かない心と戦いながら待っていたシカマルに、焦ったような声がかかった。 シカマルの待っていた相手は金色が眩しいうずまきナルト。 先日お互いの気持ちが通じ合ったばかりの二人。 ナルトはついこの間まで男の子として生活していたが、実は女の子だったことを周りに話し、更にはシカマルが好きだと告白したのだ。 多少のすれ違いがうまれたものの、今は恋人同士としてまるくおさまっている。 「えと、待たせちゃったみたいで…ゴメンってばよ。」 「いや、それは別に全然いいんだけどよ、まだ時間早いし…その…」 その格好、と言ってシカマルはナルトの姿をじっと見つめた。 「あ、えっと、イノとサクラちゃんが…」 ナルトは綺麗なオレンジ色のワンピースを着て、髪は短いながらもピンでとめられたり遊ばせたりしており、可愛らしくまとまっていた。 「やっぱ似合わないってばよねぇ。」 「… るよ。」 「う?」 「〜っ超似合ってるよバカ。」 顔を真っ赤にしたシカマルに、それと同じかそれ以上に赤くなったナルトはバカじゃない!と返すのが精一杯だった。 しばらく二人して真っ赤になって動けなかったが、なんとか足を動かしはじめた。 「昼飯、お前何喰いたいんだ?」 「一楽のラーメン!」 「…へいへい。」 その格好でもやっぱりラーメンなのか…とシカマルは小さくため息をこぼした。 「あ!え、えぇと、ぱ、パスタがいいってばよ…」 ナルトの明らかに挙動不審な訂正に、シカマルは意味がわからんと首をかしげた。 「なんだそりゃ、そんな明後日の方を向いて言うなよ。」 「うっ…」 「ラーメンだろ?」 「うぅっ…」 「食べたいんだろ?」 「うぅぅっ…」 「味噌ラーメンチャーシューオマケ付き」 「…食べたい。」 よし、とナルトの頭を髪型がくずれないように撫でた。 ナルトは恥ずかしそうに、どこか困ったような顔で笑った。 (あー…可愛い。) シカマルはちゃっかり手を握って一楽へと歩きだした。 その後いつも通りの昼食をすませ、ブラブラと買い物をしていた。 「あ!カエル枕!」 ふと寝具店を通り過ぎようとしたところでナルトは足を止めた。 ナルトが手にしたのはカエルがのびた姿の抱き枕。 可愛いとは言えないが、愛嬌はあると言えるかもしれない代物である。 「かわいいなぁ〜」 「…そうか?」 「え?ぁ、えーと…こ、こっちのがカワイイ…かな?」 訝しげな目でシカマルが見つめると、ナルトは焦って隣にあったウサギの枕を手にした。 確かに可愛いデザインで女の子向けではあるが、ナルトは目を泳がせている。 なにより自分で言っておいて疑問系だ。 「お前カエルのが好きだろ?」 「好きだけど…いや、ほらウサギさんカワイイってば!」 ずいっとウサギを見せつけるように差し出してくるが、片手には大事そうにカエルが掴まれていた。 「ほ、ほら!ネコとかもカワイイ〜…かな?」 「なんで疑問系なんだよ。」 ったく、と言いながらナルトが掴んでいた抱き枕を奪い、シカマルはナルトを置いて店の中へと入っていってしまった。 「ほらよ。」 「うぇ?」 戻ってきたシカマルの手には大きな袋があり、それをナルトに見せた。 「え、あ、カエルの枕?!」 「…すげぇ気に入ったみたいだしな。」 「お、お金…」 「この超馬鹿…プレゼントだよ。」 ポリポリと頬をかきながらぶっきらぼうに言うシカマルの顔は赤みがかっていた。 ナルトは驚きと嬉しさで、金魚のように口をパクパクしている。 「…兎のがよかったか?」 「カエルがよかったんだってば!」 あ、とナルトが口をおさえるも言った言葉は戻らない。 プッとシカマルは噴きだしてしまった。 「喜んでんなら、よかったぜ。」 「だ、大事にするってばね。」 ありがとう、と小さく言ったナルトに頭を撫でて返し、二人はまた歩き出した。 「ここに来るの久しぶりだってば!」 そこはよくアカデミー時代にみんなと遊んだ公園。 ナルトはお気に入りのブランコに飛び乗った。 「そんなに昔じゃねぇけど…なんか懐かしい〜。」 「あーそうだな…ってこの馬鹿!」 横で見ていたシカマルが慌てた様子で突然ナルトのブランコを止めた。 「わわっ、どうしたんだよ?!」 「お前今日はズボンじゃねぇんだぞ!」 あ!とようやく気づいたナルトは顔を赤くして、慌ててスカートをおさえた。 そう、ブランコをいつものように勢いよくこぎだしたナルトはワンピース姿。 だがそんな事を忘れてズボンの時のように振る舞えば、どうしたって風でスカートはめくれてしまう。 「ぅう〜」 「ったく…俺らしかいなかったからいいけどよ。」 シカマルは呆れたようにため息をついた。 「ちったぁ女の子らしくしろよな。」 せっかく可愛いのに、という言葉が続くはずだったがシカマルはそれを言えなかった。 目を見開き、大きな蒼色の瞳から今にも涙が溢れるのではというほど悲しげな顔を見たからだ。 「…っ、ナルト?」 「……。」 声をかけた瞬間、ナルトは顔を伏せてしまった。 手はギュッとワンピースの裾を掴んでいる。 「…ナルト。」 「やっぱり…ダメかな…」 「なにがだ?」 「オレってば、サクラちゃん達に色々教えてもらったのに…」 ナルトの声は段々と震えていった。 「シカマルに釣り合うように、カワイイ女の子みたいになりたいのに…うまく、いかない…」 「ナルト…」 シカマルは今日の事を思い出した。 何やら不自然にぎこちない時が何度もあった。 思い返してみれば、ナルトなりに女の子らしく振る舞おうと必死だったのかもしれない。 慣れない姿で慣れない事をしようとして、頑張っていたのだ。 結局はうまくいかなかったのだが。 「…ほら、顔あげろよ。」 「……。」 肩を震わせながらも首を横にふる。 そんなナルトの横にシカマルは屈んで顔を見上げた。 ブランコに座っている分高くなっているナルトの顔はよく見えた。 「あー、顔ぐしゃぐしゃじゃねぇかよ。」 「み、見ないで、ってば、よ。」 顔を背けようとするナルトを引っ張り、シカマルは服の袖で優しく顔をぬぐった。 「そんなに泣くなよ。」 先ほど言い損なった言葉を今度は遮らせない。 「せっかく可愛いんだから。」 「…ふぇ?」 やっと合った目はたっぷりと涙を抱え、キョトンとシカマルを見返していた。 「…頑張ってくれんのも、まぁ可愛いけどよ。お前はそのまんまで十分可愛いぜ?」 「で、でも…」 「無理した顔より、好きなもん食ったり見たりしてるナルトのが…俺は、好きだ。」 言って照れてしまったのか、シカマルは立ち上がってナルトの頭に手をのせた。 「無理はしなくていいから。」 「オレ…シカマルと釣り合う女の子に、なりたくて。」 「俺は気にしねぇけど。まぁお前がなりたいんなら、徐々にでいいだろ?」 嫌でも身体は女のそれになっていくのだから。 次第にナルト自身、無意識に変わる事もあるだろう。 きっとナルトらしい可愛い女の子になっていく。 そう話したシカマルにナルトはポカンとした顔を向けた。 「んで、俺は駄目だっていうそんなお前も好きなわけだが…文句あるか?」 「ふふぁ!な、なひ、れふ!(な、ない、です!)」 シカマルの照れ隠しに頬をのばされ、ナルトは悲しそうな顔も涙もふきとんでしまった。 「ひ、ひはいっへは!(い、痛いってば!)」 「あぁ、悪りぃ。」 パッと手を離された頬をナルトは痛そうに撫でた。 じぃっとシカマルと睨みあうが、どちらからともなく笑い出してしまった。 シカマルは手をさしだし、ナルトはその手をとって歩きだした。 寄り添って歩く姿はまだぎこちない だが繋がれた手はしっかりと握られている 徐々に きっと二人も変わっていく 目に見えない位ゆっくり それでも確かに 変わっていく 今はまだ 歩きだしたばかり end. 初シカナルコ。 ナルコである意味がほしくて書いてみたら… ざ ん ぱ い www 途中で忍たまに浮気したのがいけなかったか← いえ、只の文才不足ですね。 ちょっと修行してきます。 小説TOPへ TOPへ |