1章 「ナルト!どうしたのじゃ!」 「・・・っう・・・」 三代目が仕事を片付け、地下に降りてみるとナルトは部屋の奥でうずくまっていた。 部屋と言っても、天井近くに小さな鉄格子の付いた窓があり、6畳ほどの室内にはほとんど家具などない。 その奥でうずくまっているナルトは血を吐き、顔は青を通り越して土気色をしていた。 「ご飯・・・食べ・・たら・・・」 「またか!・・・ジッとしておれ。」 そっと手をかざし医療忍術を施した。 九尾の力もあって徐々にナルトの顔色が戻ってきた。 おそらく食事に毒を盛られたのだろう。 毒を盛られたのは初めてではない。 今までに何度も世話役や、食事を作る者に命を狙われたのだ。 その度に人を変えても最後には同じ結果が待っていた。 他にも全身が青くなるほどの暴行を受けることも多々あった。 「・・・もう・・大丈夫。」 「・・・すまない。」 首をふるナルトに表情はない。 子供は親の会話や仕草で物事を覚えていく。 だがナルトは親や、常にそばにいてくれる大人はいない。 かけられる言葉は憎悪のこもった言葉。 見つめられる視線は恐怖や殺意。 まだ小さな幼児なのに、泣く事もない。 表情も感情もなく言葉さえ乏しいのだ。 何とか助けたいと思うが、まだ回復しきらない里の現状を考えると信頼する誰かがずっとついていてやることはできない。 三代目は一つの決断をした。 「ナルトよ・・・これからお前に忍術を教えていく。」 「・・・にん・・じゅ、つ?」 「あぁ、忍の術じゃ。・・・お前が自分の身を守るための力になる。」 三代目はナルトをそっと抱きしめた。 だが腕の中でナルトは小さな声で呟いた。 「・・・おれ、生きて・・いいの?」 「っ!!・・当り前じゃ!決して死んではならん!」 三代目は腕の力を強くした。 生きてほしいとの思いをこめて。 守ってやれない謝罪の気持ちをこめて。 それから三代目はナルトに忍術とたくさんの知識を与えた。 親の才能をしっかりと受け継いでおり、驚くほどのスピードでそれらを吸収していった。 そして何とか一人で身を守れるようになったころ、狙ったかのようにナルトは火影邸を出された。 家を用意され、そこで暮らすように上から言い渡されたのだ。 また三代目達は激しく反対したが、ナルト自身がそれを了承した。 「ナルト!何故あんな命令を了承したんじゃ!」 「・・・もう、多少の事なら何とか・・一人で生きていける。それに・・・」 もうじいちゃんには迷惑かけたくないんだ、そう言ってナルトは俯いた。 「迷惑なわけないじゃろう・・・馬鹿者。」 「・・・ごめんなさい。」 謝るも顔をあげようとはしなかった。 それから何を言ってもナルトは聞かず、火影邸を出て行った。 一人で住まうようになってから、ナルトへのあからさまな暴力が目立つようになった。 外に出れば“化け狐”と呼ばれ、人気のないところに連れて行かれ殴られる。 それでもナルトは死ななかった。 教わった忍術や、九尾のチャクラを駆使して生き延びていた。 三代目に生きると約束したから。 一人で暮らし始める前に三代目は一つの条件としてナルトに約束させたのだ。 “自ら死を選ばないこと。” ナルトはその約束を守り、暴行を受けても決して死ぬ事のないように見極めていた。 だがそこに「生きたい」という意思があるわけではない。 生きろと言われたから生きている。 感情も意思もナルトにはほとんどなかった。 だが、辛い日々の中・・・ナルトに運命が訪れる。 to be continued.. 小説TOPへ TOPへ |