あなただけ | ナノ





ペイン襲撃後



















あなただけ














ペインによる襲撃の後、里人総出で復興にあたっていた。
勿論ナルト達も例外なく働いていた。

「シカマルー!シカクのおっちゃんが呼んでるってばよー!」
「おーう。」
「お疲れ様、ナルト。」

作業場で指示を出していたシカマルをナルトが呼びにきた。
シカマルの横にはチョウジも手伝いをしていた。
あれほどの闘いの後だというのに、ナルトは皆の先頭に立って働いている。

「お前そんなに動いて大丈夫なのかよ。」
「少し休んだら?ナルトが一番大変だったんだからさ。」
「平気だってばよ。それにシカマルもチョウジも怪我してたじゃねぇか!」

大丈夫か?と、とことん人の心配しかしないナルトに二人はため息をついた。
確かに骨折をしたりもしたが、医療忍術をしっかり受けたのでもう特に支障はない。
それに戦闘の凄まじさを思い出せば、誰だってナルトの方を心配するだろう。

「…全く。面倒くせぇが行くか。チョウジ、後は頼むぜ。」
「うん、わかったよ。」

チョウジに後の事を任せ、シカマルとナルトは歩き出した。




















「なぁ、シカ。」
「何だ?」

問いかけてきたナルトの顔は先程と違って真剣だった。
シカマルも自然と真剣な面もちになる。

「俺のホッペつねってくんね?」
「……あ?」

シカマルの顔は一転、間が抜けた顔になってしまった。
ナルトは相変わらず真剣だ。

「なんでだよ。」
「いいからいいから!ちょっとこう、ギュッと。」
「…この超馬鹿。」

真剣な顔して何をいうかと思ったら、とシカマルから大きなため息が出た。

「バカじゃねぇってばよ!いいから、ほら!」
「ほらじゃねぇ!ったく馬鹿!」

顔を近づけてきたナルトの頭をいい音をさせて叩いた。

「いってぇ〜…あ、でもこれで夢じゃないってば!」
「……ヨカッタナ。」

やっぱりそういう事か、と内心呆れながらシカマルは止めていた足を動かしだした。
ナルトもその後を追った。

「だいたい何が夢じゃない、だ。あんだけの事があったってのによ。」

木ノ葉の里がこんな状態になってしまったのは確かに信じたくないが、ナルトはその死闘を終わりにさせた張本人。
夢のような心地なのは周りの方だろう。

「…里の人がさ。」
「ん?」
「俺を見ても嫌な顔しなかったり、声かけてきたり…したんだってば。」
「……。」

疎むような視線ではなく。
罵りの言葉ではなく。

「色んな人が心配してくれたり、誉めてくれた…。」
「…そっか。」
「シカ達以外にこんな事言われるなんて思ってなかったから、夢みたいでさ!」

あと、とナルトの顔が照れくさそうな笑顔で続ける。


「また、シカと二人で歩けてるのが嬉しいってばよ。」

「…超心配したんだぜ、ナル。」


死ぬ気はない。
負ける気もない。
それでも、忍で在る限りは闘いが待っている。
シカマルの手が優しくナルトの頭を撫でた。
そして二人で幸せそうに笑った。













「お、ナルト!シカマル!」

復興作業中の側を通りかかると二人を呼ぶ声がとんできた。

「キバ!お疲れさんだってばよ。」
「おう。お前体大丈夫なのかよ?」
「平気だってばよ!キバこそ怪我治ったのか?」

先程と同じような会話をしていると、キバの他の周りにいた人達も声をかけてきた。

「ナルト!お疲れさん!」
「おお、うずまきじゃねぇか!」
「お前休んでなくていいのか?」
「今度うちの息子と握手してやってくれよ。」

あっという間にできた人の輪。
ナルトは戸惑いながらも笑顔で返していた。
人は絶えずどこからか現れ、今は先程いた人数より大分増えていた。

シカマルは少し離れてその様子を見ていた。












「あれ…?」

話しかけてくる1人1人に返事をしていると、いつの間にかシカマルの気配がなくなっていた。
そこでシカクに頼まれてシカマルを呼びに来ていたのだ、というのを思い出した。

「あの、みんなゴメン!俺頼まれ事の最中だから行くってばよ!」

いつの間にかできた人の輪をくぐり、ナルトはシカマルを探して走り出した。

















「シカ!」

少し走ると普通に歩いている姿が目にとまった。
名前を呼び駆け寄ると、振り向いて返事をした。

「おう。」
「ご、ゴメンな。話し込んじまって…」
「ん?別に構わねぇよ。みんな新しい英雄と話がしてみてぇんだろ。俺だってお前がやっと認められて嬉しいんだぜ。」

言葉と共に返ってきたのは優しい笑顔。

「せっかくの賞賛を俺なんかが邪魔しちゃ悪りぃと思ってな。親父は適当に探せばいるだろうし。」
「…でも…」

言葉の途中でナルトは俯いてしまった。
どうしたのか、とシカマルは顔を覗き込むように見るが表情はよく見えない。

「どうした?」
「……邪魔なんかじゃないってばよ…」

俯いていた顔を勢いよくあげ、ナルトはシカマルを見据えた。








「俺を最初に認めてくれて、信じてくれたのはシカマルだ!ずっと支えてくれてたのもシカマルだってば!だから…」








「誰が誉めてくれても、どんだけの人が囲んでくれても、シカには…すぐ隣にいてほしいんだってばよ!」









蒼の中にうっすらと膜がはり、光を受け煌めいていた。
堪えきれず溢れそうだと気づき、ナルトは背を向けて逃げようとした。

「っ!」
「…ナルト。」

だがすぐにシカマルに捕らえられ、後ろから抱きしめられてしまった。

「シカ…」
「お前はもう俺だけじゃない。同期の仲間だけでもなく、里の皆やたくさんの人がついてる。それでも、」

言葉を切ると腕の力は更に強くなった。



「俺を…必要としてくれるか?」



ナルトが認められた事はシカマルも本当に嬉しい。
蔑まれていたナルトが、今こんなにも慕われている事も。
だが、シカマルにとって寂しさのような不安があったのもまた事実。
もうナルトの周りにいるのはシカマルだけではない。
数え切れないほどの人が彼を信じ共にいるだろう。
そんな中でも、自分を選んでくれるのか不安が陰ったのだ。



「シカマルが…シカが居てくんなきゃダメなんだ。隣に、いてほしいんだってばよ。」

「…あぁ。もう、嫌だって言っても側にいるからな。」

「嫌だって言っても居てもらう!」

「ナル…ありがとな。」

腕は抱きしめたままだが、今度は優しく、愛おしそうに抱きしめた。
ナルトもシカマルの腕に手を添え、顔には笑顔が戻っていた。














今どんな幸せがあっても

たくさんの優しさを貰っても

最初の幸せも優しさもくれたのはあなた。


どれだけの幸せを

優しさを手放しても

あなただけには

側にいてほしい。


隣という場所は

あなただけ。




end.





最近やっとこさNARUTOを全巻読みました←
実は今まであんまり暁とか解ってなかったという(死ね
でも全体的にヤバい泣きました。
何回読んでもナルトの出生秘話あたりは号泣です。

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