売買
2011/03/17


「何の用だ」
重い曇天の空から降る雨を窓から静かに眺めていたペインはその低い声にびくりと肩を震わせた。降り返れば用意しておいた熱めの茶を平然と啜っている角都がいた。
忍だから当然なのだろうが、角都は何においても物音一つ立てる事がない。一応仲間なんだし少しは気を抜いてくれても良いのでは、とペインは常々思っている。
「ああ、急に呼び出してすまなかったな」
「気にしていない。だが、用件は手短に言え」
まるで空気を割るようなそれにペインは内心肝を冷やした。気にしていない割りには額には少し青筋が立っている。これだけ機嫌が悪いという事は、きっと相棒との乳繰り合いの最中に自分は運悪く呼び出してしまったのだろう。
仲睦まじいのは素晴らしい事だとは思うが、真っ昼間からコトに及ぶのは止してくれ、とペインは心底願った。口に出さない所はやはりさすがリーダーである。

「では、単刀直入に言おう。先日お前達に頼んだ取引先がいたく飛段を気に入ったようでな。不死身でしかも男である飛段を欲しがっているんだ、性癖はまあ言わなくても分かるだろう。だが、言い値で買ってやるとの事だ」
角都は動揺することなく、とんだ好き者がいるものだ、と呟いた。
その台詞をそっくりそのまま角都に返してやりたい気持ちをペインはぐっと抑える。
「飛段はお前の相棒だし、意見は聞いておこうかと思ってな。で、どうする?」
「………三億両、という所か」
もちろん拒絶の言葉が返ってくると思っていたペインはその意外な返答に眉を顰めた。
「…三億両?お前にとって飛段はそんなものか?」
「そんなものだろう。宗教は金になると言うから組んだがアレは個人的な稼ぎは一両もない。暁の中では一番使い物にならん」
「……」
「しかも馬鹿だ」
飛段が相棒になってから、角都の雰囲気は少し変わった。
例えるなら、今まで頑固だった父親が孫が生まれてからはデレデレに!みたいなアレだ。
それが恋仲だろうがホモだろうがは置いといて、良いことだとペインは思っていたのだが勘違いだったのだろうか。
「…見損なったな、角都。取りあえず取引先には三億両を用意して貰うように連絡しておく」
席を立とうと机に手を掛けたところで、ペイン、と低い声がそれを制した。感情が読み取れない輪廻の瞳がじっとこちらを窺うのが何とも気まずく、角都はそれからふと目を反らす。
「まぁ、いくら馬鹿で使えないと言ってもアイツはオレの相棒だ。売るには条件がある」
「条件?」
「ああ。今から三十分以内に、全額キャッシュで持って来いと取引先に伝えておけ」
入って来た時と同じように、角都は静かに部屋から出て行った。ペインはふむ、と考える。忍の足でだってここまで辿り着くのに三十分以上は掛かるだろう。しかも三億両をキャッシュでとなるとそれは到底無理な話である。
「……全く」
好きだからでも恋人だからでもなく、まるで時間内に用意出来なかった取引先が悪いんだろう、と理由を聞けばそう返ってくるに違いない。売りたくないのなら一言そう言えば済むのに面倒な男だ。それでも、ペインの口元は緩やかに弧を描いている。



いつも思うんだけど、改行ってどのタイミングで入れれば良いのか分からん(笑)
ちなみに飛段売ってくれって話が来た時点で取引先とは手を切ってる飛段ラブなウチのペインww
角都は自分の逃げ道を常に考えて動いてるんじゃないかと思うよ、ひねくれおじいちゃんだし(^p^)



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -