心情は曝せない
2011/02/25


一時間ほど遅れて宿に戻ってきた角都のコートから、さっき会った情報屋の女の匂いがしてオレは愕然とした。鼻の奥をツンと刺激するほどのそれは、密着しない限りは染み付かないはずだ。
掛けられたコートを見つめたまま何も言わないオレを不審に思ったのか角都がどうした、と聞く。
そりゃ、角都にとっちゃどうって事ねー話だよな。
「…風呂、沸いてるぜ」


シャワーの音が聞こえる。
角都が風呂に入ってからも、ただそこに突っ立っている事しか出来ないオレはかなり情けない顔をしているに違いない。
掛けてあるコートを乱暴に払う。
意味がないことくらい分かっていたのに、さらに強くなった匂いにオレは一人項垂れた。
先に宿に戻ってろって、もしかしてそういう意味だったのか?てめーはホントいつでもどこでも盛るんだなジジイのクセによ、なんていつもの軽口も叩けない。
悔しいことに、オレは角都に本気だったので。



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -