雪を溶かす温度
2011/01/10


歩く度にぎしぎしと雪が鳴り飛段は久しぶりのその感触に年甲斐もなくはしゃいだ。お前は餓鬼かと呆れて先を行く角都だが、その速度はゆるりと穏やかである。それに気付いた飛段は、へっガキで悪かったなーと返し無意識に歩調を合わせている角都の足跡を自分のそれに塗り替えていく。文句は全然言い足りなかったが、でもオレはどうしたっててめーに着いて行くしかねーんだよな、と飛段は喉の奥でひっそりと笑った。

どのくらい歩いたのか分からなくなった頃、剥き出しの足の指が赤く染まっていくのを飛段は黙って見つめる。そういや何で忍の具足って爪先が開いてんだ?すげー不便じゃね?なんて素朴な疑問に頭を捻っていると、ふと足元に陰りが差した。何事かと顔を上げればごつい掌、それに続く腕、相変わらず無表情な角都の顔。何だよと目で訴えればひどく気まずそうに眉をしかめて角都は口を開く。
「…冷えるからな」
普段無駄口など一切叩かない目の前の男は、寒いから手を繋げと告げようやくそれを理解した飛段は思い切り吹き出した。確かに角都は寒がりだが、たかが手を繋ぐだけで寒さが凌げる訳などないと分かっているはずなのに。飛段は思わず馬鹿かてめーと、いつも自分が言われている台詞を呟いた。
「それ、言い訳っつーんだぜ?」
そして自分に向けられているその不器用な手を乱暴に取り、飛段は走り始めた。今日は久々に宿でも取ろうぜ角都よ、声を掛ければ、ああ寒いからなとまた同じ答えが返って来る。正直なところ理由なんてどうでも良かった。ただ、角都が自分に甘えるという事実を素直に受け取る事が出来ない。
びゅうっと吹き抜けた冷たい風は走り続ける飛段の火照った頬を優しく宥めた。



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