相合い傘、しませんか?
2011/02/08


※社会人×高校生




都会に珍しく雪が降った。
学生で帰宅部の飛段は早い時間から家でゴロゴロしながら角都の帰りを待っていたが、窓から見えた雪に一人はしゃいだ。角都はきっと傘を持っていないだろう。
迎えに行こうか、とメールをしたら大した量ではないから必要ないと断られた。仕事の邪魔になるのでいつもならそこで終わるメールのやりとりに何となく寂しさを感じて「帰る頃メールしろよ、傘持って待ってるから」とだけ打って携帯を閉じる。有無を言わせない内容を送ってしまったことに少しだけ後悔した。確か今日は残業がないって言ってたっけ。
ちらりと時計を見ればまだ5時を回っていない。気が早いよなと思いつつも飛段はコートとマフラーを手に玄関へと向かった。


駅前のカフェでの長い時間潰しに飽きてきた頃、待ち侘びていたそれが電子音と共にテーブルをカタカタと鳴らした。ディスプレイには見慣れた名前と番号が表示されている。無意識に口元に笑みが浮かんでしまって、飛段は慌てて通話ボタンを押した。
「着いたぞ」
「ん、今そっち行くからちょっと待ってろよ」
「ああ」
相変わらずいい声してんなァ。飛段はホットコーヒーを二つ頼み急いで駅へと向かった。
ちなみに持ってきた傘は一つだ。
飛段は世間体や友人の目などどうでも良かったが、やはり角都は気になるらしく必要以上に飛段と出掛けることはない。そりゃそーだよなァ男同士だし相手は立派な社会人だし。角都にもあまり構えなくてすまない、と頭を撫でながら言われるので仕方がないのだと自分に納得させている。
別に一緒に居てくれればいいやとはいつも思っているが、それでもやっぱり期待で胸が膨らむのを飛段は止められなかった。ちょっとデートっぽいよな、なんて思ったらなおさらだ。

角都は怒るだろうか、それとも呆れるだろうか。そのどちらとも予想出来て飛段は笑った。きっと彼は怒ってそして呆れるのだろう。
全身を黒にまとった長身の恋人を見付けるのは簡単だ。飛段はひたすら走る。それでも、駅が遠い気がしてならなかったのだった。



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