両極端の端を結ぶ
2011/02/06


もう少し寄れと飛段がせがむので角都は望み通りにしてやる。だらしなく広がっていた飛段の脚は腰に絡み、導かれるまま角都は体重を掛けた。目の前の身体は柔らかく開き角都自身を更に深く受け入れる。飛段は満足そうに、はぁ、と艶めいた息を吐いた。

互いの鼻が触れる距離でしばらくじっと見つめ合う。
深いような淡いような紫色をした瞳に、気怠そうな表情をした顔が愛おしいと角都は思った。
口から耳にかけて伸びた縫い目に手を差し込み、眉間のシワまで愛おしいと飛段は思った。

しかし、どれだけ近くにいようがどれだけ深く繋がろうが理解しがたいものは存在する。
例えばそれは角都にとって飛段であり、飛段にとっては角都だ。
金への執着、神への信仰、上げればキリがないがそれでも二人は一緒にいる。暁はツーマンセルで行動するのが基本だからと言えば確かにそうなのだが、それだけではない気もするのだった。
「……オレさァ、今までずっと一人で生きていけるんだと思ってんだけど」
ふと飛段が呟いた。
角都は無言でその続きを促す。
「今はちょっと無理かもなァ」
「…何故だ」
「いやいやお前のせいで」
飛段特有の下品な笑い声が静かな森に響く。それのせいで角都が入ってる穴の入り口や奥の方がヒクリと蠢くがじっとやり過ごした。
「なぁ、どうしよう。オレお前がいねーと生きていけねーって、ヤバくね、ゲハハハ」
「……馬鹿か」
お前は、と言いかけて角都は口を閉じる。ふと角都にも同じように思い当たる節があったのだ。
以前、飛段と喧嘩をした。これはいつものことだが、アジトに戻っても二人の機嫌が直る事はなく任務にもジリジリと支障をきたしていた頃。リーダーは何故か飛段を猫可愛がりしていて(角都にとっては大変ウザい存在である)飛段を殺すのならコンビを解消しろと言い渡されたのだった。相棒は必要ないと大声で公言していたものの、リーダーのその言葉に角都は一瞬たじろぐ。
いや分かった迷惑を掛けんよう努める、角都は早口で言い捨てたがリーダーは口をポカンと開け、そうかお前そんなに飛段の事…と若干涙目になっていた。べっ別に、今さら他の相棒を探すのが面倒なだけなんだからねっ!勘違いしないでよねっ!なんてツンデレ属性を出す角都(齢91)にリーダーはふぅんと興味無さげに呟いた。
思い当たる節があった、とか言いつつ書いてる本人もどこら辺が思い当たる節だったのか分からなかったが許して頂きたい。
とにかく、結局角都は飛段に謝りに行き(今晩の飯はスペアリブでも食いに行くかという謝罪の言葉は微塵も感じられないものだったが飛段は単純に喜んだ)事なきを得たのである。要は、角都も心のどこかで飛段を必要としていたのだった。

「テメーはジジイの癖にマジ格好良くて強えーし、あとオレの千切れた腕とか首とか縫ってくれてついでに作る飯もウマイと来た」
「だが、世界は広い。オレ以上の術を持った奴がいるかもしれんし飯だって…」
「あーはい、分かった分かった。角都のこと好きだからオレは角都じゃなきゃダメなんだ、こう言やぁいいんだろ?」
飛段はそう言って目を閉じる。それの答えなど最初から求めていなかったかのように。だが、角都は分かっていた。いつ頃飛段が自分を好きになったのか、また自分がいつ飛段を好きになったのか。
「…随分乱暴な告白だな、オレだってお前を愛しているのに」
「テメーこそ適当じゃねーか」
飛段の目がゆっくりと開く。そこには驚きも羞恥もない。角都はそっと飛段の唇に自分のそれを寄せた。ああ、なんだお前も初めから分かっていたのか。
何かオレら超ダセェー!飛段は相変わらず笑っている。角都は柄にもなく目の前の少々頭が足りないが自分を必要としてくれる存在を大事にしたいと思った。



何なんすかコレww



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