青い空と春
2011/01/10


「ハアー!!」
先程までぐっすり寝ていた飛段ががばりと飛び起きて声を上げた。着替えをしていた角都は突然の奇声にひどく驚いて、それをごまかそうと思わず胸を抑える。心臓がうるさい。
「……何だ急に」
「角都ゥ!今!ジャシン様が!夢に出て来たんだぜ!」
そしてまた飛段はうおーと唸る。ああ下らない、と角都は心底思ったが口に出すことはしなかった。飛段が何を信じようが角都には関係のない事だし、いや、確かにあの儀式やら呪いやらはやたら時間が掛かって角都にとっては面倒な事この上ない。けれどそれ以上ににやけまくっている目の前の馬鹿面をもう少し見ていたいと思うので、良かったな、なんて言えてしまう自分がいる。何とも認め難いものなのだ。
「ゲハハハァ!」
しかし更に馬鹿面をかました飛段にきっと心を打たれたであろう角都はマスクの下でこっそり自分に溜め息をつく。全く面倒な相棒だこれなら今まで組んでいた奴の方がよっぽどマシだ、そんな風に角都は嘘吹いた。そんな事言うなよ角都ゥ、相棒の甘ったれた声にイラッとしたので硬化した腕で思い切り頬を張った。
「いい加減目が醒めただろう」
「お…お前マジでひでー!」
喚く飛段の襟首を掴みそのうるさい唇にかぶりついた。存分に味わってから突き放せば紫の目はとろりと溶け白い肌はうっすら染まっているのに角都は満足した。置いて行くぞ飛段、といつもと同じ台詞を吐くがしかし歩く速度は亀並だ。角都はふと空を見上げる。雲一つない晴天は青く、ああまるで今の自分を映したような色ではないかと目を細める。
(あの馬鹿の幸せを壊すなど到底出来たものではないだなんて全くオレはどうかしている)
そんな事口に出せるはずもなく早く相棒が自分に追い付く事をただただ願うばかりだ。



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