完璧
2011/01/10


身も凍るような寒さに耐えきれなくなった角都は通り抜けるつもりだった町で宿を取った。
安宿でも飛段はいたく喜んでいたようだが、肝心の布団は硬い上に平べったく風呂も狭い。角都が望んでいた物は結局何一つ揃っていなかった。どうせならもう少しマシな宿を取るべきだった、これでは安物買いの何とやらではないかと一人落胆している角都を他所に飛段は埃くさい布団を広げる。
だが、部屋のど真ん中に敷かれたそれは一人分で、その事に気付いた角都は更に苛立つ。このクソみたいな宿の金を出したのはオレだと言うのに何て野郎だ。硬化した腕で気の済むまで殴り散々いたぶってやる。完全な八つ当たりだがそんな事はどうでも良かった。
もそもそと布団に潜り込んでいた飛段が角都の気配に気付き、頭だけを出して猫を呼ぶように手招きをする。
「なぁ角都、一緒に寝ようぜ」
鼻を赤くして悪戯っ子のような顔をした飛段がゲハハと相変わらず下品な声で笑う。角都は一瞬躊躇ったが結局黙ってその中へと誘われた。暴力を振るおうとしていた手はするりとその腰を撫でる。飛段はしなやかで暖かく、角都にとってそれは望んでいたもの全てだった。



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