同化作用
2011/01/10


好きだ好きだとやたらうるさい口を同じそれで塞げば、驚いたのだろう紫色の目は見開かれて今にもこぼれ落ちそうだった。角都はそれから目を反らして存外柔らかい唇に舌を宛てがう。気付いた飛段は熱の上がった口内にそっと角都を誘い込んでその身を震わせた。
「ゲハ、んだよ角都ゥー」
笑い声に少々腹が立ったが濡れた肉が擦れ合う生々しい感触に角都はぞわりと肌を際立たせ、思わず飛段の背をぎゅうと抱いた。顔が熱くなるのを感じる。ン、と鼻の抜けた声が耳に届き、先ほどまで止めろと信号を出していた脳は麻痺を起こす。軽く頬を叩かれて、名残惜し気に離してやれば、いいんだぜ角都と飛段が小さく呟く。
「別に何でもいい。オレとてめー二人、理由なんて必要ねーよ」
なァ?と首に腕が絡む。今まで角都がずっと否定してきたことを飛段は知っていたのだろう。こういう感情を捨てた覚えはなかったが二度と拾うことなどないと高を括っていたのは事実だ。だからこんなにも、目の前の男が。
「…理由がない、訳ではない」
「だァから!」
下らない事を考えるなとでも言うように、ぶっちゅうと色気のない音を立てながら飛段は再び角都の唇に吸い付いた。さっさとこの気持ちを認めて口にしてしまえば楽になるのだろうか。それが角都には分からない。ただ確かに言える事と言えば始めからこの世に正解など存在しないということだ。



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