(ヒロイン:患者家族。妹の名前は固定「花」)


最先端の技術を集結したHigh Kyu Hospital 。病院もホテルのように美しく、重厚感な造りとなっている。そんな建物の中で明るい声が響きわたった。


「くまさーん!」
「わっ・・・花ちゃん!ずいぶん元気になったねぇ」
「うん!今日は検査だけなのー」


少女が叫んだ「くまさん」こと東峰旭は足元に抱きついてきた少女を抱き上げた。数ヶ月前までは常にベットの上の生活だった少女がここまで元気になったのが嬉しく、破顔した。また、東峰は小児科医にも関わらず子どもに泣かれてしまうという致命的なスキルを持っている中、泣かずに東峰に懐く数少ない子どもであった。そんな子が可愛くないわけがない。


「今日は検査か、あれ、今日お母さんは?」
「おかーさん今日お仕事!おねぇちゃんが来てるの!」
「おねえちゃん?」
「うん!おねぇちゃん!あ、来た!おねぇちゃーん!」
「花!1人で行かないの!すみません先生・・・・・・え、旭くん?」
「え・・・名前ちゃん?」


花が検査をしている間、東峰と名前は病院内にあるカフェに座っていた。


「すっごい久しぶりだね、何年?えーっと、5年くらい?」
「それくらいになるかなぁ」
「変わらないね、旭くん」
「名前ちゃんも変わらないね」
「それは嬉しいなぁ・・・旭くん仕事大丈夫なの?」
「あ、うん。そろそろお昼食べようかなって思ってたところ」
「もう16時なるけどね・・・お医者さんは大変だね」
「あはは・・・」


東峰は目の前のパスタをフォークでくるくる巻き取ってみるが、なかなか口には運べない。今日は朝から忙しくて疲れてお腹がペコペコだったのに、食欲がどこかにいってしまっていた。


「名前ちゃんは?東京・・・に行ったよね?」
「あー・・・うん。こっちに帰ってこようかなぁって思って、有給消化中?」
「仕事で何かあった?ていうかてっきり結婚したかと思ってた・・・」
「う・・・」
「あっ、ご、ごめん!何かダメだった?」


東峰は大きな図体とそれを包んだ白衣をバサバサと言わせながら慌てた。その姿はなかなか滑稽な姿で、名前は暗い顔をしていたがその姿をみて少し笑みが溢れた。


「働き始めて少ししてお付き合い始めた人がいて・・・もう4年くらい付き合ったかな・・・私はその人と結婚も考えてたの、ほら、もう周りも結婚してるし、だけど彼は私とそのつもりなくって・・・この間別れちゃった」
「そ、そうなんだ・・・なんか、ごめん」
「ううん、いいのいいの、ちょっと浮かれてた部分もあったし、そろそろ落ち着こうかなぁって地元に帰ろうかなーって考え中」
「そっか・・・」


東峰は名前をみながら大学時代を思い出した。彼女は大学時代から大人としての魅力と落ち着きが合わさり、素敵な女性になっていた。そんな彼女を見て大学時代の淡い恋心を思い出させずにはいられなかった。


「旭くんは?」
「あー俺は仕事が忙しくて恋愛とか浮いた話ないなぁ」
「そうなの?お医者さんって女の人寄ってくるイメージあるからさ」
「俺、ほら飲み会とかそういうの苦手だからさ・・・」
「あはは、大学のころからそういうの苦手だったもんねー」


大学時代の名前は学部が違う東峰に優しかった。2年生の頃勉強に行き詰まり落ち込んでいたところに声をかけたのが始まりだった。内気な東峰に明るく引っ張ってくれていた名前。時間が合えば一緒にお昼を食べいく、唯一の女友達であった。周りに付き合ってるんじゃないかという勘繰りもされたが友人から一歩進むことなく、卒業が2年早い名前が離れて行ってしまった。


「そうだ、旭くん、花の主治医だったんだよね、遅くなったけど本当にありがとう」
「えっ!い、いいよそんなの、花ちゃんを元気にするのが俺の仕事だし、花ちゃんが今笑顔でいてくれたらそれでいいから」
「旭くん・・・」
「ん?んん!?え、ちょっ、ちょっと名前ちゃん泣いてる!?」
「もー旭くんの馬鹿」
「ばっ・・・!」
「・・・ほんと、大学時代から変わらないよね」
「?」
「私ね、大学時代旭くんのこと好きだったよ」
「え・・・!?」


名前は瞳に涙をいっぱい溜めながらふにゃ、っと笑った。東峰は心臓を掴まれた衝動と、その衝撃で持っていたスプーンを落としてしまい皿と金属のカランという音が響いた


「お、俺も!俺も名前ちゃんのこと好き!今も、」
「え」
「あ゛っ・・・いや、あの、昔も好きで、再会してまた好きになったというか、えっと」
「旭くん、私のこと・・・好きなの?」
「・・・・・・ハイ」
「・・・さっき話した付き合ってた人って旭くんに似てるんだよ」
「え゛!!じゃあ俺と一緒にいると嫌なこと思い出すよ、ね」
「・・・あー!もう旭くんの鈍感!へにゃちょこ!」
「へ、へにゃちょこ!?」
「旭くんが好きだったから、その影をずっと追ってたんだよ、」
「!!」
「あはは、旭くん顔真っ赤」


あの頃の後悔を今ここで


「お、俺と付き合ってください」


151108


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